さてさて。気づけば、もうクリスマス休暇になってしまいました。早い。
同室の子達は全員、クリスマスのために家に帰った。っていうか、スリザリン生の8割が帰った。みんな、なにかしらパーティーがあるんだと。休み前の自慢合戦のすごかったこと。
そのおかげで昨日から談話室は貸切状態。すごいなクリスマス。
そういうわけで一人寂しくクリスマスの朝を迎えたわけなんですが。
なんだ、この箱の山は。
起きてみたらベッド脇にあったそれに、寝起きの頭は30秒かけて、やっとそれだけを思い浮かべた。
――これ、もしかしなくてもクリスマスプレゼントか。
数年ぶりに見たそれに、ちょっとテンションが上がってきた。
とりあえずと一番上にあった平たい箱を取れば、リボンにメッセージカードが添えてある。
『メリークリスマス、』
見覚えのある字。そう思いながらカードをひっくり返せば、予想通りドラコの名前。
一体なにを送ってきたんだろう。期待と不安が半々で、恐る恐るリボンを解き包装紙を破る。
「お、おぉ…かっこいい…」
箱の中には、純白の羽根ペンがあった。
毛先まで綺麗に整った羽根は、光を浴びてキラキラと輝く。
「うおー。ドラコのやつ、良いセンスしてるじゃん」
滑らかな手触りの羽根を撫でては、誰もいないのを良いことにひとしきり一人ではしゃぐ。
そして高まったテンションのままに残りのプレゼントも開けていく。クラッブとゴイル、パンジーにミリセント…。
見事にスリザリン生からの物ばっかり。あ、訂正。ハグリッドからのプレゼントもあった。
ようやくテンションが平常に戻り、ベッドの上に並べたプレゼントの数々を前にはぁと溜め息を吐く。
皆さん、豪華すぎやしませんか?私、全員ハニービーンズのお菓子の詰め合わせなんだけど……。
来年はもう少し時間をかけて考えよう。
そんな反省をしたクリスマスの朝だった。
「ダンブルドア先生!」
廊下の向こうから歩いてきた人物に、寄りかかっていたガーゴイルの像から体を起こす。
「、どうしたんじゃ?」
目を丸くしたダンブルドアの頭には、大広間のパーティーで被った三角帽子がそのままだ。
「あの、これどうぞ!」
言葉と一緒に差し出したのは、不織布のラッピング袋。
「わしにくれるのかい?」
「はい。色々とお世話になってますし、何か差し上げたいと思って」
「開けていいかな?」
目の前で!?反射的にやめてくださいと言いそうになったけど、なんとか飲み込んで、どうぞと頷き返す。
リボンが解かれるのを居心地悪く感じながら見て、袋から取り出した物に遂に目を逸らした。
「おぉ…これはこれは」
ダンブルドアのなんとも言い難い声に意を決して顔を上げる。こうなれば、上手い感じに弁解してーー、
「ありがとう、。今年のクリスマスで一番嬉しいプレゼントじゃ」
そう言ってきたダンブルドアの首には、ターコイズブルーのマフラー。
巻くの早いわ!!突っ込みかけて、ダンブルドアの水色の目が子どもみたいにキラキラしてて、うっと言葉に詰まる。
「特にこの大きな穴なんて、とてもユニークじゃな」
「メ、メリークリスマス!!では!!良いお年を!!!」
悪戯っぽく笑ったダンブルドアを遮るように言って、脱兎の如くその場から逃げ出した。
「、ハッピーメリークリスマス」
追いかけてきた声が温かくて嬉しかったけど、それ以上に恥ずかしくて振り返ることなく走り続けた。
メリーメリー
クリスマス!