The first prize! The Forbidden Forest tour

学年末試験まで残り1週間。
そんな忙しい時期に、見事「禁じられた森ツアー」に当選してしまったんですが。
……うーれーしーくーなーいー。

当選理由?
ノーバートを渡した後に透明マントを忘れるほどに浮かれ舞い上がったバカ可愛いハリー達を見に行ったからですが。ええ、お腹抱えて笑ってたらミス・ノリスに見つかりましたよ。あの目怖すぎ、猫恐怖症になるわ。

3人組とはハロウィンの日以来いい感じに何の関わりもなく過ごせていたというのに、なんでこんなイベントに巻き込まれてるの。
バレないだろうと、よく分からない自信を持っていたあの夜の自分を全力で殴りたい。


「ってか、ちょっとドラコ。大丈夫?」
完全に腰が引けている隣のドラコに目をやり、ため息を一つ。だけど今のドラコはそれに小言を言えるほど、精神的余裕はないみたい。
既に森に入って10分以上。お月様の明かりとさようならをしたのが、随分と前に感じるほど、森の中は暗く、そして冷たく重たい空気が満ちていた。

と、先頭を歩いていたハグリッドが立ち止まった。
近寄ってみれば、――ユニコーンの死体が地面に横たわっていた。
微かに差す月明かりにキラキラと銀の血が光って、不謹慎にも綺麗だと思ってしまった。
「いいか、怪我してるやつを探すんだ。ハリーとハーマイオニー、それには俺と来い。ネビルとマルフォイはあっちだ」
「あーハグリッド、ロングボトムじゃなくて私がドラコと行くよ。こんな森の中でぶっ倒れられたら困るし」
右手を上げて口を挟んだのは、多分無意識なんだろうけどドラコが腕にしがみついていたから。もともと白い肌なのに、それ以上に顔面蒼白になっているドラコを一人にはさせられない。それに、もし万が一にもこのお坊っちゃまに何かあったら、ハグリッドの立場が危うくなるし。
「だが、…」
「じゃあ、僕もそっちに行く」
「え」
「お、おいハリー」
渋るハグリッドにそう言い返したのは驚いたことにハリーだった。
思いも寄らない流れにぽかんとしている間に、ハリーはハグリッドを説得してしまう。
「ほら、行くよ」
「お、お前に言われなくても行くさ!僕に命令しないでくれるかい」
ハリーと一緒になって、ドラコの落ちまくっていた士気が少し回復したようで。これはこれで良かったのかな?
、悪いが頼んだぞ」
「うん、任せて」
申し訳なさそうに言ってくるハグリッドに頷き返す。
そして、ずんずん歩いていく二人を追って走り出した。



「ねー、ドラコ。ずっと聞きたかったことがあるんだけど」
ハリーとドラコと、私。
三人分の足音が響くだけの空間が居心地悪くて、無言で前を歩く背中に声をかけてみた。
だけど、暫く経ってもドラコはこっちを振り返ることなく歩き続ける。なによ、聞こえてるはずなのに。
「ねぇ、ドラコー!ドラちゃーん!フォイフォーーイ!!」
「聞こえてるよ!それになんなんだよ、それ!」
しつこく呼び続けたら、ようやくドラコが振り返った。そうか、フォイフォイ呼びは嫌なのか。今後のために覚えておこう。
立ち止まったドラコに近寄って行ったら、薄明かりで見える顔はさっきより赤みが濃くなっている。ハリーと一緒だから、対抗心のおかげで恐怖が少し和らいだのかな。
そんなことを考えながらじっと顔を見ていたら、ドラコは嫌そうに眉に皺を寄せた。

「一体なんなんだよ」
「あ、そうそう。なんでドラコは私に良くしてくれるの?」
「……は?」
「私に良くしても、得があるとは思えないけど」
飛行術の一件以来、なんとなく感じてたんだけど、ドラコは他の子に比べると私に良くしてくれている。
それがすごく不思議だった。私には、家も財も人脈もなにもないというのに。
「……得とか考えてない。ただ僕がと友達になりたいと思っただけだ」
「え、私とドラコって友達だったの?」
衝撃の事実。
思わず真顔で聞き返してしまった。
「いや、でも家の人とか大丈夫?私なんかと友達とか……」
「友達くらい自分で選ぶ」
それは入学の日にハリーがドラコに言った言葉。
それをドラコが言うなんて、そして私が聞くなんて思ってなくて、うまく言葉を返せない。

――友達、友達かぁ。
頭の中で繰り返して、気づけば頬が緩んでいた。



誰とも深く関わらず、物語の進行を眺めるだけで十分だと思ってた。
寧ろ下手に関わることで本来と違う展開になるのが怖くて、主要人物達と関わるつもりなんてなかった――――んだけどなぁ。
「〜〜っ、ニヤニヤするなよ」
「し、してないってば!」
ドラコに言われて、慌てて頬を手で覆う。

(こんなに嬉しいなんて思ってもなかった。)

一等!禁じられた森ツアー
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