Quidditch weather

晴れ渡る空、暖かな日差し、心地よい風、熱気溢れる生徒達。
今日は今学期のクィディッチ開幕戦。対戦カードは待ちに待ったグリフィンドール対スリザリン。

イコール!!ハリーのデビュー戦!!



、こっちへ来いよ。ここが一番見える」
「わぁ、よく見える!ありがと、マルフォイ」
マルフォイの隣まで行きフィールドを見て歓声をあげる。どっちのゴールも見やすい場所。そして、ハリーがスニッチを捕まえるであろう場所もばっちり。
すごく嬉しくて、笑顔でマルフォイにお礼を言って、
「マルフォイ?」
なぜだかムスッと拗ねたような表情になっているマルフォイに目を丸くする。
不思議に思ってじっと見ていたら、大きく溜め息を吐かれた。そうして、ジト目で見てきた。
「いつまでそう呼ぶんだ」
「え?」
「…………名前」
長い沈黙の後、ボソッと呟かれた言葉に目を瞬かせた。名前?
マルフォイの言葉の意図が分からなくて首を傾げていたら、「だから!」とマルフォイが怒ったように声を上げた。
「僕はって呼んでるのに、なんで君は僕のことをマルフォイって呼ぶんだよ!」
「あー…そういうこと。なんかマルフォイって呼ぶ方がしっくりしてて」
マルフォイの言葉で漸く理解ができた。言われてみればそうか。確かにずっとファミリーネームで呼ぶのもおかしいか。
そう納得して、ふと思いつく。
まさか、あのマルフォイがそんなことを気にしてるなんて。
「……おい」
「なに?」
「なんで笑うんだよ!」
「笑ってないよー」
そう言い返すものの、口元が緩むのは隠しきれなかった。
だって、なんか可愛いって思ってしまったんだもの!





「やっぱりポッターって上手いんだね」
肉弾戦とかヤジの押収とか命の危機を乗り越えて、フィールドではハリーが漸く捕まえた金色のスニッチを掲げている。それを見下ろして、心底思ったことが自然と口に出た。
急加速からの急降下。しかもあの速度の箒の上に立とうなんて普通思わないわ。
主人公補正もあるんだろうけど、ハリーの身体能力と度胸には驚くばかり。
「ふんっ、僕と比べたら全然大したことないね。あれくらい誰だってできる」
そう言ってみせたマルフォイに、でもと返しかけた言葉を寸でのところで飲み込む。
君、ハリーとシーカー対決して負けたよ?なんて言えるわけがない。
「私、来年が楽しみになってきちゃった」
「なんでだよ?」
「だって、来年はマルフォイも参加するんでしょ?」
きっと負けてしまうけど。マルフォイが飛ぶのを想像したら、すごく楽しみになった。
それにもしかしたら今日みたいに、今まで知らなかったマルフォイの一面を見ることができるかもしれない。そう考えたら、飛ぶ姿を想像するよりも、ずっと期待に胸が高鳴った。


「かっこいいとこ見せてよね」
マルフォイ、と続けようとした口を止める。
そして、深く息を吸って、
「応援するからね。ドラコ」
ぎこちなく付け足した名前は、すごく不自然だった。
ぽかんと口まで開いてしまったマルフォイに、なんだか恥ずかしくなって早足に城へ向かう人波に紛れた。
「ドラコ、ドラコ、……うー言いにくい」
歩きながら小声で繰り返されしてみて、ぎこちなさに苦笑が浮かぶ。

だけど、いつか自然に呼べるようになればいいな。
そう思ったら、足取りが軽くなった気がした。

クィディッチ日和