Of the secret cover it

「マダム、ありがとうございました」
医務室の奥に引っ込むマダムにお礼を言って、入り口へと小走りに向かう。
「お待たせしました、教授」
そして、暗い廊下に溶け込むように佇んでいたスネイプに声をかける。
スネイプはこっちを一瞥しただけで、すぐに歩き出した。向かう先はスリザリンの談話室。



「貴様はなぜあの場にいた」
しばらく無言で歩いていたら、唐突にスネイプがそう疑問を発してきた。
二歩前を行く背中を見て、
「それ、聞かなかったことにしますね」
その答えに、相手の足が止まった。
それに合わせて立ち止まって、眉間に皺を寄せた気難しい顔を見上げる。
ランプの火がスネイプの彫りの深い顔に濃い影を作る。
「じゃないと私、教授の右足がどこで食い千切られそうになったか、聞いちゃいますし言っちゃいますよ?」
へらっと笑ってそう言い返せば、スネイプの黒い目がわずかに瞠られ、そのまま自分の右足に視線をやった。
視線の先にはしっかりとローブで隠した右足。そこがどうなっているかなんて、ただ見ただけでは分からない。
…貴様…」
「教授」
軽く床を蹴って、距離を詰める。突然近づいた私に、スネイプは半歩足を後退させた。
――勝った。
警戒を緩めないスネイプの前で徐にスカートに手を伸ばし、
「どうぞ。マダムから頂きました」
治療のついでにもらってきた塗り薬を差し出す。これを塗れば、すぐに良くなるんだって。
薬を差し出したままの私を無言で見下ろすこと10秒。根気比べはスネイプが薬を取り上げることで終わった。
それはつまり、スネイプが私の言葉を飲んだということ。
すぐに踵を返して歩き出したスネイプに、そっと息を吐き出す。上手い言い訳なんて考えられなかったから助かった。

ただ、それと引き換えにスネイプからの不審度は急上昇したんですが。

秘密の隠し合い