「ハリー、談話室に戻って作戦会議だよ!」
大広間から出ながら、握り拳を作って力強く言うロンに頷く。
絶対にマルフォイに一発お見舞いしてやるんだ。
頭の中でマルフォイをやっつけるイメージを浮かべながら前を向いた時、大広間の扉の前で所在なさげに立っていたネビルを見つけた。
「ネビル!もう平気なの?」
「うん、大丈夫。たいした怪我じゃなかったから」
ネビルのところまで走って行き、いつもと変わらない姿に安堵の息を吐く。
「そっか、安心した。夕食を食べにきたんでしょ?早く入ったら?」
「うん、そうなんだけど……あっ」
話している途中で、ネビルがいつもよりも大きく声を上げた。
その視線の先を追ってみれば、大広間から出てきたがいた。
『どこか高いところにでも置いておけば』
『おめでとう、ポッター』
の言葉を思い出して、唇を噛みしめる。
――やっぱり、ロンの言う通り嫌な奴だった。ダイアゴン横丁の時は猫を被ってたんだ。
「ちょっと、ネビル!?」
ロンの声に我に返ったのと、ネビルが走り出したのは同時だった。
いったい、急にどうしたんだろう。
不思議に思いながらネビルの行く先を見つめていたけれど、それがのところだったからロンと顔を見合わせた。
「!」
「ネ……ロングボトム」
「。僕、君に言いたいことがあって」
「ちょっと待って。こっち……って、ポッターにウィーズリー」
そのまま話し始めようとしたネビルを遮って、がこっちへやってきた。
近づいてくるのを黙って見ていたら、だいぶ近くまでやってきてからは僕達に気づき、途端に苦い顔になった。
「なんだよ、僕達がここにいちゃ悪いかよ。先にここにいたのは僕達だ。というか、お前、飛行術の時はよくも」
「待って、ロン。ネビルがと話すのが先だよ」
隣でロンが言葉を続けようとしたけど、今は遮った。声をかけたのはネビルなんだから。だけど、僕だって言いたいことはあるんだ。
沸々と体の奥底で沸き上がっている怒りを込めつつを睨めば、はぱちぱちと目を瞬かせた。そして、微かに口の端を上げた。――まるで、何かに満足しているかのような顔。
――なんで。
そう思った時には、は僕達から視線を外してネビルと向き合っていた。
「で、何の用?」
「えっと、あ……あの……」
口ごもってなかなか言葉の続かないネビルを、はじっと見つめる。
「さ、ささ、さっきは助けてくれてありがとう!!」
ばっと頭を下げたネビルに、の目は丸くなった。そして多分、僕も同じ顔をしている。
まさかネビルがお礼を言うなんて思ってなかったから。だって、あの後は――。
「ネビル、礼なんて言わなくていいよ!こいつ、君の思い出し玉で嫌がらせしようとしたんだ」
頭に浮かんだことをロンが先に言葉にした。突然話に入られてネビルは驚いたようで、それにロンの剣幕に怯んだようだった。
「うん、知ってるよ。……だけど、あの時が助けてくれなかったら、もっと大怪我をしてたと思うから。だからお礼は言っておきたかったんだ」
けど、ネビルは引くことなくそう続けた。目はしっかりとを見ている。
ネビルと暫く無言で対峙した後、は突然くすくすと笑い始めた。
「ネビルは本当にいい子だね」
そう言って、ぽんぽんとネビルの頭を撫でる。突然のことにネビルはされるがままだ。
「……、何してるんだ」
「マルフォイ」
声をかけられてはネビルから離れ、往来のど真ん中で立ち止まったマルフォイを振り返る。
「べーつに。なんでもないよ」
表情は見えなくて、だけど声が少し弾んでいて、多分笑っているんだろうと思った。
そのままはマルフォイの所へと走って行く。それを目で追い、睨むようにこっちを見ていたマルフォイと視線が交わった。
真っ直ぐ睨み返せば、マルフォイはニヤッと笑った。
尻尾を巻いて逃げるなよ。そう言ってる気がして、ぎゅっと拳を握る。
絶対に勝ってやるからな!!
大広間前での攻防