「なんかね、距離を図りかねてるみたい」
「距離だと?」
ティーカップを持ち上げながらそう言ったら、ハグリッドはさっぱりわからんって感じの顔をした。
「スリザリンに選ばれたからには恐らく純血なんだろうけど、日本人だし…みたいな。関わって損はあっても得はないって感じ。未だにみんな、名字で呼んでくるんだよね」
ここ一週間の状況をぽつぽつ零したら、ハグリッドが腕を組んでんむむと唸り声を上げる。
「俺は今もなんでがスリザリンに選ばれたのか分からん。俺はてっきり、もグリフィンドールだとばかり思っとったわ」
「そうなの?ありがとう」
嬉しいことを言ってくれる。だけど、その選択肢は随分前に排除していたから、曖昧に笑うしかなかった。
持ち上げたままだったティーカップにようやく口を付けて、何となく窓の外に目をやれば、城からこっちへと近づいてくる二人の男の子に気がついた。
ぱっと腕時計を見れば、3時少し前。うわ、長居しすぎた。
「うわ、ハリーだ。ハグリッド、今日は招待してくれてありがとう」
「もハリー達と話していけばよかろう」
「そういうわけにはいかないの」
慌ただしく立ち上がり、小走りに裏口に向かう。もう一度窓の外を見たら、もうハリーとロンはすぐそこまで来ていた。
扉を開けて、不満顔のハグリッドを見上げる。
「ハグリッド、私のこと言ったらダメだからね」
そう言った時、戸を叩く音が聞こえてきた。
戸を振り返ったハグリッドにもう一度念押ししたら、不承不承の様子だけど頷いた。
口の軽いハグリッドのことだから不安は残っていたけど、ファングが戸の前で吠え始めて、慌てて外へと飛び出した。
秘密のお茶会