A boundary line with them

朝の大広間は緊張と期待が混ざり合ったちょっと浮ついた空気が満ちていた。
朝食をだいたい食べ終わって生徒達を観察していたら、ハリーとロンが大広間に入ってくるのを見つけた。腕時計を見れば、随分と遅い時刻。迷ったのかな。
残っていたコーヒーを流し込んで、鞄を手に立ち上がる。
向かう先は二つ向こうのテーブル。

「グッモーニン、ポッター」
ベーコンエッグにかぶりついている背中に声をかけると、ハリーはすぐに振り返って目を丸くした。
「んぐっ…!」
ぱぁっとハリーの顔が明るくなって、きゅんっと胸が鳴った。なにこれかわいい。
「スリザリンが何の用だよ」
「ウィーズリー、昨日のことまだ怒ってるの?器の小さい男はモテないわよ」
ハリーの隣から棘たっぷりな視線と言葉を投げてきたロンを見返す。
さっとロンの頬に朱が差して言い返されそうになったけど、その前にこっちの要件を済ませるためにハリーに視線を合わせる。
「ベゾアール石は知ってる?」
「……え?」
戸惑ったような声を無視して、鞄から羊皮紙の切れ端を渡す。そこには、魔法薬学の教科書に載っているベゾアール石の記述を書き写しておいた。
「これ、覚えていたら良いことあるかもよ」
、どういう…」
「ポッター、違うわ」
頭の上にはてなマークを浮かべたハリーの言葉を、強い口調で遮る。
真っ直ぐに見てくる緑の目に息を吸い、
よ。気安く名前で呼ばないで」
冷たい声で、突き放すように。
目を見開いたハリーから視線を外して、踵を返して歩き出す。
途中でハリーの呼ぶ声が聞こえたけど、振り返りはしなかった。


ハリー達とはできる限り関わらない。

それは、ホグワーツ入学が決まってからずっと考えていたことだった。
だって、ハリー達と関わるってことは面倒ごとに巻き込まれる確率が高くなるってことだから。
ハリー達の冒険に興味がないわけでは無いけど、そこに自ら身を投じる気は全然無くて。
だから、身の安全を守って平穏で楽しい生活を謳歌しつつ、彼らのファンタジックでスリリングな物語を見るためには、これが最良の判断なのだ。
そう言い聞かせることで、寂しいつまらないと叫ぶ声は押し潰した。

彼らとの境界線