Encounter limited express

ざわざわ、こつこつ。
窓の外とドアの向こうの通路から絶えず聞こえてくる心なしか浮き足立った音に、ふぅっと息を吐き出す。
右手首の腕時計が指すのは午前10時55分。
そろそろ出発時刻だ。

「城に来るまでの間に、素晴らしい出会いもあるじゃろう」
城で1年生の集団に合流しようと考えていた私に、そう言ったのはダンブルドア。
ローブだけバッグに入れて、9と3/4番線に姿現し。それがかれこれ3時間前のこと。……一番乗りだったわ。

そんなことを思い返していたら、汽笛の音が鳴り響いた。
そして、ホグワーツ特急は動き出した。
さてさて、ホグワーツ城まで何してましょうかね。

「……ねえ、ここ空いてる?どこもいっぱいなんだ」
と、ノックの音の後に戸が開いて、その隙間から誰かが顔を覗かせた。
赤毛にそばかす、ひょろっとした背丈。

ロンだぁ!!

予想外の主要キャラの登場に目を見開き、ロンのそばかすのある顔を見つめる。
ダンブルドア先生、あったよ出会い。しかも超ど級の。

眉を下げて答えを待つロンに、一つ息を吸ってにっこり笑う。
「ごめん、空いてないから他に行ってくれるかな?」
そうして、笑顔のまま堂々と嘘を吐き出した。



――うん、これはハズレだわ。
一口齧っただけのビーンズを空いた袋に入れ、一緒に買った水を飲む。
ただいま午後1時。車内販売で適当にお昼ご飯を買って大体食べ終わったところ。
まだ半分ほど残っているビーンズの箱を閉じた時、

「ねえ、ヒキガエルを見なかった?ネビルのペットが逃げちゃったの」

本日二度目の訪問者。
はい、ハーマイオニーですよ。かわいい。
そして、その背後にネビルも。
栗毛の髪に、ちょっと強気な態度。まだまだ可愛らしいという言葉の方が似合うハーマイオニーに思わず見とれてしまい、答えるのを忘れていた。
「ねえ」
「あ、ごめん。見てないわ」
「そう。……ところであなた、日本人?」
「うん、そうだよ」
隠すこともなかったから素直に頷けば、ハーマイオニーはちょっと驚いた顔になった。
「すごい。日本にも魔女がいるのね。初めて知ったわ!」
そう言うとハーマイオニーが笑って手を差し出して来た。
「私、ハーマイオニー・グレンジャー」
だよ。よろしくね」
「よろしく。じゃあ、私達カエルを探しに行くわ」
握手を交わして、ハーマイオニーはネビルと一緒にカエル探しに戻っていった。
黒いローブの裾が翻ったのを見て、向かいの座席に置いたバッグからローブを取り出す。
うん、乗って良かった。
胸の中の心地よい高揚感に、ローブに腕を通しながら自然と笑顔がこぼれた。

出会い特急