Let's go shopping.

おはようございます、夏の太陽の陽射しが眩しいです。
まぁ、じめじめしてないから不快には感じないけど。
――ただし、目の前の人は別。
「おはようございます。今日はよろしくお願いしますね、スネイプ教授」
にっこり笑いながら一息に言って、目の前のセブルス・スネイプ教授を見上げる。
しかしこっちが笑っているというのに、教授は口を固ーーく真一文字に引き結んで、じめじめねちっこい目で見てくるだけで。
「我輩は校長の頼みでダイアゴン横丁までの移動手段を貸すだけだ。買い物は一人でやることだな」
漸く口を開いたと思ったら、言うことはそれですか。しかも先に一人で行っちゃってるし。
っていうか挨拶くらい返しなさいよ、挨拶は良好な関係を築くために重要なんだから。
こういう人だと分かっていたのに、頭の中には色々と文句が浮かびまくって。
引き攣ってしまった笑みをなんとか元に戻して、既に城の門へと歩き出した背中を追った。



「――鍋オッケー、教科書も全部ある……ローブも買った」
大勢の人が行き交う道の端に立って、小さな鞄の中身と購入リストを見比べる。
出かけ際にダンブルドアから貰った鞄は、いつぞやハーマイオニーが持っていたのと同じような拡張魔法がかけられていた。
おかげで一人での買い物も身軽にこなせていて、心の中で改めて校長に感謝の言葉を述べる。
あ、教授?ノクターン横町との境付近に姿現しした後は、待ち合わせの連絡もそこそこにどっか行っちゃいましたよ!
「あとは――杖か」
この買い物の、そしてこの世界において最重要アイテムの名称。 それを呟き、肩に鞄の紐をかけ直してオリバンダーの店へ足を向ける。

――と。ちゃりん、ポケットの中で貨幣が当たる音がして足を止めた。
鞄と一緒に渡された、十枚程度の金貨。受け取るのを渋ったけど、一文無しの私が買い物をするためには受け取るという選択肢しかなく。
『気にせんでよい。老いぼれには必要でないほどにあるんじゃよ。だから、必要としているウィネが使ってくれるなら、これ以上嬉しいことはないんじゃよ』
そっと掌に金貨を置いてきたダンブルドアの柔らかな顔を思い出して、少しだけこそばゆい気持ちになる。
「お金は無理だけど、何かで返さないとな……」
そんな決意を小さく零して、人混みの中へと足を進めた。

買い物に行こう