The real reason

「まさか親友に裏切られるなんて」
「裏切るなんて、人聞きの悪いこと言わないでちょうだい」
「言うわよ!一緒に回るって約束したじゃないの!なのになんで彼氏優先!?」
「仕方ないじゃない。親友の恋愛に協力しなさいな」
しれっとそう言ったレイラにぐっと言葉を飲み込んで、でもお腹の中のグルグルした気持ちは消せなくて腕を叩く。
「ごめんなさいね」
「心がこもってないーー!!」

初めてのホグズミードなのに、一人で回るなんて寂しすぎるじゃない!!





結局、レイラは彼氏と行ってしまった。

「あーあ、つまんないわー」
溜め息とともに吐き出した声は、往来の楽しそうな声に消されてしまった。
本当なら私もあんな風に楽しく回っているはずだったのに。
ハニードゥークスも三本の箒も、一人で入ったら居心地悪くてすぐに出てしまった。ずっと楽しみにしていたのに。
(ハリー達へのお土産は買ったし、もう帰ろう)
これ以上村に留まる必要も無いし、私の精神衛生的にもそうした方が良いだろう。
そう決めてベンチから立ち上がろうとした時、誰かがベンチの反対側に座った。

「っ!!??」

何となく隣を見て、赤毛が目に入った瞬間にベンチから立ち上がった。
なんで、ウィーズリーが。落ち着く前に、そばかすだらけの顔がこっちを向いた。剣呑な色を宿した目。
(この人、フレッドだ。)その目に、直感がそう告げた。息を吸い込む。

「フレッド・ウィーズリー。私に何か用かしら?」
直感を信じて、こっちから話を切り出した。先に相手に話し出されたら、ペースを持って行かれてしまいそうだと思ったから。
「!」
幸いにも直感は当たっていたようで、フレッドは驚いた表情になった。しかし、すぐに顔つきを厳しいものに戻す。


。僕の相棒に何をしたんだ?」
何のこと?惚けるという選択肢が一瞬浮かんで、すぐに却下。きっとフレッドは、確信して言っている。
どう返したものか。悩んでいる間に、フレッドが立ち上がる。高いところから見下ろされて、緊張感に体が強張る。乾きかけた喉に、唾を飲み込む。
「ハロウィーンからジョージの様子がおかしい。あの日、ジョージは君を助けに行った。てことは、君と何かがあったと考えるのが普通だろ」
さあ吐け、と言わんばかりの威圧的な態度に、少しだけ苛立ちが湧いてきた。なんでこんな風に言われなきゃならないの。私、悪いことなんてしてない。私はただ──。



「ただ、友達になりたかっただけよ」



吐き出した声は、随分と不機嫌なものだった。私の言葉に、フレッドは眉を寄せて訝しげな顔になる。
「友達?ジョージが、君と?」
心底理解できない、意味不明だって感じの声音。分かってる。スリザリンがグリフィンドールと仲良くするなんて、とってもおかしいということは。

それでもあの時の私は、そんな考えなんて微塵も頭の中にはなくて、寮とか出自とか関係なく、ただ”ジョージ・ウィーズリー”と友達になりたいと思ったんだ。

そんな衝動が湧いたのは、何度も危機から助けてくれたから?それとも、モリーさんに頼まれたから?────ううん、もっと理由は単純だ。


ずっと前の、初めて会ったあの日に見た、ジョージの笑顔が今でも忘れられない。
きっと私は、ジョージの笑顔が見たいんだ。できるなら、いつでも何度でも。

それが、きっと本当の理由だ。


本当の理由