Cute junior trio

、忘れ物はない?」
「オッケー!完璧よ!!」
肩から提げたポシェットをパシンと叩く。昨日のうちに中身は確認してあります!
「だからほら!早く行こう!」
ステップを踏んじゃいそうなほどウキウキした気分。
なんてったって、今日は待ちに待ったホグズミード行きの日!!
今すぐ寮を出て行きたい!

────のに。

「あ、ちょっと待って。この髪留め、やっぱり合ってないみたい」
部屋から出る寸前で、レイラは姿鏡とにらめっこをし始めた。こうなるとレイラは長い!
「そんなことないよ、似合ってるって!さすがレイラ、今日もとっても綺麗!」
「全然心がこもっていないわよ、
早口に言って急かす私を、レイラは呆れたような目で見ていた。




「もーっ!レイラってば!自分は何回も行ってるからって!」
なんとかレイラを説得してロビーまで連れてきたのに、あと少しというところでやっぱり髪留めを変えたいと寮に戻ってしまった。
「あーもぉー」後から来た他の子達が外出手続きをするのを恨めしく見つめる。ああもうっ、早く戻ってきて!
他の子が城の外へ行くのを見ていたら余計にやきもきしそうで、何とか視線を引っ剥がして反対に顔を向ける。

「あっ、ハリー!」
偶然にもその先にハリーとロンを見つけ、思わず名前を呼んだ。
名前を呼ばれたハリー達がきょろきょろ周りを探して、先に私に気づいたのはロンの方。ひらひら手を振れば途端に顔を曇らせて、それから仕方なさそうハリーの肩を叩いて私を指さした。うーん、もう少し隠した方が良いよ?
!」
それに引き替え、ハリーはぱあっと顔を明るくした。周りに視線を向け、スリザリン生がいないことを確かめて彼らの所まで駆け寄る。ハリーと親しいことを少しも後ろめたく思ってはいないけれど、自衛のため。嫌がらせとかされるのはできる限り避けたい。

「あら?」
近くまで行って、二人の横に女の子がいるのに気づいた。栗色のふわふわした髪、1年生らしいあどけなさを残しながらも表情はきりりと凜々しく、少しキツい印象すら持った。
もしかしたら、この子がハリーが言ってた新しい友達なのかな。好奇心のままに女の子をじっと見ていたら、彼女は私の視線を逃れるようにロンの後ろに体を隠した。しまった、失敗した。こほんと誤魔化すように小さく咳払いをして、社交界で鍛え上げた完璧な笑顔をつくる。

「初めまして。私、よ。でいいわ」
相手の緊張と警戒心を解すように笑う。彼女は少し迷った後、ロンの後ろから出てきてくれた。
「ハーマイオニー・グレンジャーよ。よろしくお願いします、
まだ完全には警戒を解いていないけれど、女の子──ハーマイオニーはしっかりと私の目を見てくれた。

はスリザリンなんだ」
「えっ、スリザリン!?」
「ちょっと、ハリー!?」
不意に挟まれたハリーの言葉に、ハーマイオニーが目を見開く。
なんで今言うの?視線で抗議すれば、どうせすぐにバレるでしょ。そんな感じの顔で見返してきた。確かにそうだけど。
「えっと……うん、私スリザリン生なの。でも、別にあなた達グリフィンドール生のことを敵視なんてしていないから」
「そうなんだ。優しい良い人だよ。は僕達の友達なんだ」
再び警戒を強くしたハーマイオニーに、しどろもどろに弁解の言葉を並べる。
そんな時、フォローをしてくれたのもハリーだった。
友達。ハリーが堂々と音にした単語に、じーんと胸の奥が熱くなる。嬉しいし、あの英雄に友達と受け入れられたのだと思うと、とても誇らしい。

「ハリー……」
「ちょっと待って。今、僕達って言った?僕は君の友達になった覚えはないんだけど」
浮かんできた涙は、ロンの抗議の声に引っ込んでしまった。この流れでそんなこと言う?感動が台無し!
むすっとロンを睨めつけると、ロンはふいっと顔を逸らした。まったく、ここの兄弟は!
少し腹が立って、何も言わずにむんずとロンの右手を握る。
「はい、握手!これで友達!」
「は、はぁっ!?嫌だよ!」
「なんでよ!」
ぎょっと目を剥いたロンが、ぶんぶんと手をふりほどこうとする。絶対に離してやるもんか!ほとんど意地になって、ぎゅうっと手に力を込める。
「あははっ、いいじゃないかロン。が良い人なのは知ってるでしょ?」
「だけど、スリザリンだ!」
「スリザリンでも良いじゃない!寮で決めないでよ!」
「いやだね!」
ロンってば頑固者!引くに引けなくなって、だんだんと大きな声で口論になっていく。
視界の端でハリーは顔を背けて笑っているし、ハーマイオニーはぽかんとした表情になっているし。


。目立ってるわよ」

そこに冷静な声が投げ込まれる。
はっと我に返ってみれば、すぐ近くにしかめ面のレイラが。
居心地悪く視線を泳がせて、握っていた手も解く。
「ごめんなさい。大人げなかったわ」
「別に……」
ロンも気まずそうに視線を逸らした。
それ以上会話を続ける気持ちにもならず、じゃあまたと言い残してレイラの元へ向かう。
「全く。なにやってるのよ」
「ごめん」
あーあ。せっかくのホグズミードだというのに。これじゃあ、あまり楽しめないかもしれない。
苦い溜め息を零した時、
」ロンの声に後ろを振り向く。
「君が悪い人じゃないの、分かってるから」
視線は少し下に向けて、歯切れ悪そうに言葉を紡ぐ。隣のハリーに小突かれて、迷いながらも視線が交わった。
「だから、その……よろしく」
その意味を理解して、体の中の重たい気持ちが全部吹き飛んだ。不承不承な感じなのは、この際気にしない。

「お菓子のお土産3人分、楽しみにしててね!」
「3人……えっ、もしかして私?」
「もちろん!だって、ハーマイオニーも友達だもの!」
驚いた顔で自分を指さしたハーマイオニーに、にこっと笑いかける。戸惑ったようにハリーとロンを見ると、2人は首を横に振っていた。

「あーあ、あの子達かわいそうに」
レイラの苦笑交じりの声は聞こえないふり。何をお土産にしようかな。ウキウキした気持ちが膨らんで、スキップで手続きの列へと向かった。


可愛い後輩トリオ