Dream of a two-seater dream

翌朝。大広間に朝食を取りに行くと、ドヤ顔のハリーを見つけてあんぐりと口を開けるドラコ──という、とても面白いものが見れた。



それから一週間後。
ハリーポッターがグリフィンドールのクィディッチ選手、しかもシーカーに抜擢されたという噂が流れてきた。
どうやらドラコが関与した飛行訓練の一件で、シーカーとしての才能を見出されたらしい。ドラコに確認すれば既に知っていたようでとても不機嫌な顔になった。
「どうせ大したことないさ」そう言いながらもどこか気になっている様子のドラコに、そうだと提案。

「グリフィンドールの練習、見に行きましょうよ」




断られた。
ハリーのことは私も気になっていたし、仕方が無いから一人で競技場にやってきた────けど、なかなか入り辛い雰囲気。ちょっとでいいから見れないかな。
競技場の周りをウロウロしていたら、前方からグリフィンドールの男子生徒が歩いて来た。どこかで見たことある顔だ。確かクィディッチ選手の、えーと…。
「ウッドだ」
「確かにそうだが。うちの選手に何か用でもあるのか?」
そう、獅子寮キャプテンのオリバー・ウッド。彼は私の前で立ち止まると訝しげな顔で見てきた。素直に答えたら見学の許可もらえるかな。
「もしかして……偵察か?」
「違います。私はハリーを見たいだけです」
見当違いの問いは、すぐさま否定する。
だけど、ハリーの名前を出したのはまずかったみたいだ。
「ハリーを?やっぱりスパイだな!?」
途端に眉を吊り上げて警戒を強めたウッド。あーあ、失敗してしまった。苦笑いを浮かべて頬を掻く。
残念だけど出直そう。騒ぎが大きくなる前に退散しようと、その前に少しくらい誤解を解いておこうと口を開く。

!」

明るい声で名前を呼ばれて、頭上を仰ぐ。まだ明るい空を背に、深紅のユニフォームが翻る。
そこには、箒に跨がって飛んでいるハリーがいた。

すとん、とハリーは危なげなく私の横に降り立った。
、久しぶり」ハリーの笑顔につられて、顔がほころんだ。
「久しぶり、ハリー。本当に選手に選ばれたのね」
「うん。マルフォイのおかげだよ。マルフォイがネビルの忘れ玉でけしかけてくれなかったら、マクゴナガル先生に飛ぶところを見てもらうことも、選手になることもなかったし」
「ふふっ。ハリーってばそんな嫌味も言えるのね」
くすくすと口に手を当てて笑えば、同じ高さの目が悪戯っぽく光った。
「ところでなんでがここにいるの?」
「あー……、ハリーのことが気になって見に来たんだけど、あなたには会えたし練習の邪魔しちゃいけないからもう帰るわ」
ハリーに話しながら、すっかり蚊帳の外になっていたウッドと目を合わせる。軽く会釈をすると、相手はさっきよりは警戒を解いてくれた。
さて帰ろう。ハリーにも別れを告げようと思ったら、ハリーはウッドの名前を呼んだ。
「ねえ、ウッド。僕が飛ぶところだけでも見せちゃだめかな?」
ウッドが呆気にとられた顔をしたけれど、きっと私も同じような顔だったと思う。




ウッドの返事はもちろんノーだったけれど、ハリーが相当食い下がった。
そして先に折れたのはウッドの方。選手全員が集まるまでなら、と見学の許可をもぎ取ったハリーは、私を見ると得意げににっこり笑った。


「ハリー、すごいっ!!」
びゅんびゅんと自由自在に空を飛び回るハリーに、自然と歓声が大きくなる。
アンジェリーナ・ジョンソン達女子選手の睨みも全然気にならなくなるくらい、ハリーの飛ぶ姿に釘付けになっていた。
急上昇に急旋回、急降下。目で追いかけるのが大変なくらい、ハリーの動きはとても俊敏だ。ドラコのやつ、これを見たら大したことないなんて言えないだろう。ただ箒で飛ぶことに関しては特に自信をもっているドラコだから、臍を曲げてしまわないか少し心配だ。

っ、どうだった?」
観客席の前までやってきてハリーがわくわくとした目で聞いてくる。たくさん飛んだから、元々ぐしゃぐしゃな髪がさらにすごいことになっている。
「とってもすごかったよ!本当に飛ぶの上手なんだね!!」
稀代の新人捕まえてなんとも幼稚な褒め言葉だったが、それでもハリーは嬉しそうにはにかんだ。
そのかわいさに胸に何かが刺さった。うわー、ハリーかわいいよー。
「私、箒に乗るの苦手だから、自由に飛べるのすごい憧れるなぁ」
「それじゃあ、後ろに乗せてあげるよ!」
ハリーは名案!とばかりに顔を輝かせる。ハリーの提案はとても魅力的だったけれど、ちょうどその時、「ハリー、時間だぞ」とウッドの声が聞こえてきた。
声がした方を見れば、ウッド以下グリフィンドールの選手が勢揃いしている。「なんでがいるの?」ウィーズリーが女子選手に尋ねる声が聞こえた。

……」
「また機会があったらよろしくね。じゃあハリー、飛ぶのを見せてくれてありがとう」
眉を下げて残念そうな顔をするハリーに笑いかける。
「練習頑張ってね」
敵寮なのに、応援してしまいそうだ。


二人乗りを夢見る