The Sorting Hat

「スリザリン!」
組み分け帽子が告げた寮名、小さく息を吐き出す。
ドラコのやつ、帽子被る前に組み分けされてたじゃない。
堂々とした足取りでスリザリンのテーブルまでやってきたドラコが、私を見るとニヤッと笑みを浮かべた。
「よろしく、先輩」
「いらっしゃい、後輩」
そして、私の前の席に割り込む。そこにいた2年生が何も言わずに席を移動した。純血一族のマルフォイ家の子息に、上級生達も気をつかっているのだろう。

「ポッター・ハリー!」

マクゴナガルが呼んだ名前に、大広間中の音が全て消えた。
その中をハリーが緊張した顔で進んでいく。
ちらっとドラコに視線をやれば、眉間に皺を作って不機嫌に組み分けの様子を見ていた。
他の生徒も興味深そうに首を伸ばして、後ろの生徒に至っては椅子の上に立ち上がったりして、ハリーをよく見ようとしていた。
組み分け帽子がハリーの顔を隠す。沈黙はしばらく続いた。そして、

「グリフィンドーーーール!!!!」

大広間中に響き渡った声に、獅子寮から割れんばかりの拍手と大歓声が湧いた。
ハリーは安心しきった顔で、どこか夢心地のようにふわふわした足取りでテーブルまで向かっていく。本当に微笑ましい反応をする子だ。
グリフィンドールはまるで寮が優勝杯をもらったかのような喜びよう。特に騒がしいのがフレッドとジョージで、「ポッターを取った!」と肩を組んで大騒ぎしている。
他の二寮は少しがっかりしたり羨ましそうだったりしながら、獅子寮を見ている。
そして、我が寮はというと、
「チッ」
ドラコは隠す気がないみたいで、それは大きい舌打ちをした。
眉間の皺はさっきよりも数段深く刻まれている。
「わあ、怖い顔」
茶化したら、キッと睨まれた。そんな怖い顔しなくても。

「ウィーズリー・ロナルド!」
青い顔のロンがぎくしゃくした歩きで帽子の元へ向かう。そんなに緊張しなくても大丈夫だと思うけれど。
その予感は的中して、帽子はすぐに寮を決めた。
「グリフィンドール!」
ほらね。テーブルに向かうのを目で追っていけば、ウィーズリーの兄達とハリーが大きな拍手で末の弟を迎え入れていた。あー、やっぱり集まるとよけい目立つなあ。
眺めていたら、不意に顔を上げたロンと目が合った。怒ったような困ったような複雑な顔をする彼に、にこりと笑いかける。
グリフィンドールで良かったわね。

最後のブレーズ・ザビニはスリザリンに決まって、大きな拍手で歓迎した。
ダンブルドアが立ち上がるのを見ていたら(ドラコがまた不機嫌な顔になっている)、隣から感嘆の声が零れた。
「どうしたの?」
「いやー、濃いメンバーだなぁと思って」
「同感」
その感想に深く頷く。全くその通りだと思う。
ドラコを筆頭に、セオドール・ノットにパンジー・パーキンソン、ミリセント・ブルストロード、それからダフネ・グリーングラス。まさか聖28一族が一学年にこんなにいるなんて。恐ろしい学年だ。
監督生がんばれー、と心の中で手を合わせる。
「彼らの指導よろしく。先輩」
「なんで私が」
顔をしかめる私に、レイラはニヤッと笑う。
「だって、ドラコを扱うのは得意でしょ?頭を取っちゃえば、こっちの勝ちよ」
「えぇ……なにそれ」
何が勝ちなのか。聞きたかったし反論したかったけど、大皿の上に現れたごちそうに大人しく口を閉じたのだった。


組み分け帽子