豪奢なシャンデリアに、見るからに高そうな装飾品の数々。
目が眩みそうなほど煌びやかなパーティー会場に集うのは、身綺麗なスーツやドレスを纏った人達。
ブラウン髪のチビが、ウエストに黒のリボンが付いたエメラルドグリーンのパーティードレスを着て、ちょっと高めのヒールの靴を履いている。なんだか不似合いで、子どもが背伸びしたみたいでひどく滑稽な姿に見える。ちなみにそれは、私だった。……なんで私はここにいるのかしら。
高い硝子窓に映った、自分の姿を見てうえぇと吐き出すふりをしたら、頭を軽く小突かれた。
「こらっ。家の娘がそんなはしたない真似をしないの」
「お母様の嘘吐き……」
「私だって頑張ったのよ?でも、今日はあの人も全然折れなくて……あら、呼んでいるわ」
ジト目で見上げたら、母様は拗ねた顔をして(全然かわいくない)パーティー会場の中央を見遣った。
そこには参加者の貴族達と談笑している父がいる。いつもはお母様に激甘なのに……。それだけ今日のパーティーは父にとって重要な場ということか。離れていく母様を見送り、壁にもたれて重たい息を吐く。
「!」
「わあっ!?」
ずいっと目の前に現れた顔に、ビックリして仰け反った。
「わ、わっ」
ピンヒールではバランスを取れず、そのまま尻餅をついた。
その様を可笑しそうに笑うのは、一ヶ月ぶりのレイラだった。
「ちょっと、レイラ……」
「久しぶり、」
なおも笑いながら彼女が差し出してきた手を、むくれた顔で掴んだ。
「珍しいわね、あなたがパーティーに来るなんて。人違いかと思ったわ」
「本当は来なくて良い予定だったんだけどねぇ」
ドレスの汚れを確認しながら、床に着いた所をパタパタとはたく。良かった、どこも汚れてない。
昼間のことを話そうか――と考えたところで、ちょんちょんっと肩をつつかれた。
名家の淑女には似合わない、ちょっと下品なにやつき顔。
「ほら。ドラコが来たわよ」
楽しそうな顔ですこと。彼女の指さす方に顔を向けるより先に、「」プラチナブロンドの髪の男の子に声をかけられた。
「、久しぶりだな」
「こんばんは、ドラコ。お招きありがとう」
私の言葉に、男の子――ドラコは、口の端を上げてにやりと笑う。
ドラコ・マルフォイ。パーティーの主催者であるルシウス・マルフォイの、大事な大事な一人息子。
そして、私の幼馴染みだ。
子どもの頃にどこかのパーティーで会ったのがきっかけで、その時からなぜかドラコは私に懐いていた。中流階級である我が家がマルフォイ家という上流階級でも特に名家のパーティーに招かれているのも、私とドラコの仲が良いからだ。父さん、私に感謝しなさいよ。
「ドラコ、大きくなったわね。ビックリした」
記憶にあるドラコと随分違って、上から下までじぃっと見つめる。
1年前は私より小さかったのに。男の子って成長が早い。
「は相変わらず小さいな。君の方が入学の祝いをされてもいいくらいだ」
フッと馬鹿にしたように鼻で笑うドラコに、すかさず蹴りを入れようとしたけれどなんとか堪えた。それに気づいたレイラが、顔を背けて笑っている。
「失礼ね。私、あなたより3つも上よ?」
「2つだろ。君は今度、3年生じゃないか」
そう言ったドラコが一瞬不機嫌な顔をしたのだけど、すぐにまたいつもの人を小馬鹿にした表情になったから、その理由は分からなかった。
「僕は必ずスリザリンに入る。よろしく頼むよ。先輩?」
心底馬鹿にした呼び方に、べえっと舌を出した。
ドラコ・マルフォイ