One friend

「やってしまったー」
「落ち込まないの。それは私もキレるし。っていうかよくやったわ」
城に入った瞬間、スリザリンの談話室まで猛ダッシュ。ソファでくつろいでいたレイラを引っ張って寮の部屋へ走り込み、扉を閉めたところでようやく大きく息が吐けた。
状況が分からず疑問符を浮かべている彼女に、ベッドに倒れ込んだ後ぽつぽつと事の経緯を話し始める。
そうして、最後に肺の中の空気がなくなるまで大きく息を吐いた。
「……ごめんねー、せっかく注意しろって言ってくれたのに」
「気にしないで。いつかは関わると思っていたから」
落ち込む私に、レイラはベッドサイドに腰掛けてフォローの声をかけてくれた。
それから「それにしても本当に失礼な男!デリカシーって知らないのかしら!」とぷりぷり怒り出した。そのかわいらしい様子を見たら、ちょっとばかり気持ちが晴れてきた。

「それよりも。私はが心配だよ」
気遣うような声に彼女を見上げると、声と同じように思い悩んだ顔をしていた。
「今でさえ、はあまり友だちがいないのに。ウィーズリーの馬鹿どもに変に絡まれてこれ以上孤立しちゃったらどうしましょう……」
「平気だって。今までだって、ほとんど一人だったんだから」
心底心配だという顔で言ってきたから、苦笑するしかなかった。そして強がりでもなんでもない、本当の気持ちを返す。
自虐的な返事だったし安心してもらおうといつかのように笑ってみたけれど、彼女の表情から憂いがなくなる様子はない。

「……ねえ、。私はあなたのことが好きだよ」
「へ、あ、うん。ありがとう?」
どうしたら分かってもらえるかな。慎重に言葉を選んでいたら、突然告白をされてしまった。
思わず茶化して話題を変えようかと思ったけれど、彼女が悲しそうな顔を見てやめた。
生憎と、私には唯一無二の親友を無闇に悲しませる趣味はない。
「だから、そんな簡単に諦めてほしくないわ」
彼女の優しい手が、頭をそっと撫でる。心地よい感覚に目を眇めた。
「んー……、ん。じゃあ、もうちょっと頑張ってみるよ」
ほんのちょっとだけ、ね。
頷いた私にレイラはそれ以上何かを言うことはなく、黙って私の頭を撫で続けたのだった。


友だちは一人