生きて卒業できたら十分だ。
2度目のホグワーツ城を見た時から、ずっとそう思っていた。
あの日、燃えるような赤毛に出会うまでは。
「フレッド・ウィーズリーとジョージ・ウィーズリー?」
聞き覚えのない名前に、ローストチキンをお皿に盛る手を止めて首を傾げる。
「そうよ。が安穏な学校生活を送りたいのなら、こいつらには関わらない方がいいわ」
一つ上級生の彼女──レイラは、上品にフライドポテトを食べながら淡々と話を続けた。
その声には簡単に分かるほどの苛立たしさがこもっている。
わざわざこうして忠告してくれるなんて、一体その子達は何をしでかしたのだろう。
自分のお皿からチキンが横取りされるのを死守しながら興味半分怖さ半分で尋ねれば、相手は形の良い眉をしかめた。
「悪戯よ。とんでもなく程度の低いね」
ずっと追いかけてくる鬱陶しい雪玉だとか、異臭を放つ爆弾のせいで授業が空いただとか。
いくつかの悪戯を聞いて、なんだかおかしくなった。そんな子どもみたいな悪戯、かわいいものじゃない。
そんな考えを相手は読み取ったらしく、「甘いわよ」持ったフォークを顔に向けてきた。こら、行儀の悪いことしないで。
「あいつら、フィルチとうちの寮には容赦ないわよ」
「え?」
そう言って大広間の反対側に視線を向けるので追ってみて、驚いた。うわぁ、同じ顔が二つ。
今にも燃えそうな赤い髪。
そばかすだらけの顔。
人なつっこい笑顔。
そのどれもが鏡で映したようにそっくりな男の子達。
名前から双子なのだろうとうっすら思っていたけれど、ここまでそっくりとは。(もしかするとそばかすの位置まで一緒かもしれない、なんて思ってしまったほどだ。)
しばらくまじまじと見ていたら、ようやく彼らが座るのが獅子寮のテーブルだということに気がついた。
なるほど、そういうことか。
さっきよりもキツくなった鋭い目の彼女に、乾いた笑いが浮かぶ。
きっとレイラも、彼らの”程度の低い悪戯”の被害者になったことがあるのだろう。それも恐らく一度や二度ではない。
「。万が一ウィーズリーに悪戯されたら必ず言いなさいよ。とっておきの呪いかけてやるから」
「うん、ありがとう。その時はよろしくね」
彼女の親切心がとても嬉しい。(チキンの最後の一切れが取られても黙っていられるほどに。)
素直にお礼を伝えた私に、レイラは心配そうに顔を曇らせる。
「ああ、心配だわ。やっぱり私も留年したら良かったかしら」
「秀才様がなぁに言ってるのよ。私は全然平気だから。ね?」
「ほんとうに?」
「ほんとのほんと!」
レイラは自分を励ます強がりだとまだ納得はしていない様子だったけど、あいにくと本心だったりする。
「今年こそ、2年生楽しむからね!」
そう言って、元同級生に向けて強気に笑ってみせた。
2度目の2年生