What We Won’t Give Up

地下の談話室に戻ってから、ドラコを見つけるのに五秒もかからなかった。
暖炉前の一等席。そこでドラコは同級生達と談笑していた。


「ドラコ、ちょっといいかしら」
一直線に歩いていくと、一番立派な椅子に座っていたドラコがこちらを向いた。
……なんだい?」
目が合った瞬間は機嫌の良さそうな顔だった。けれど、すぐに面倒くさそうに眉を寄せる。
椅子の横に立ち、座ったままのドラコを見下ろす。周りを囲むドラコの同級生達は、私とドラコの対峙に口を閉じた。ドラコの隣に座っているミリセント・ブルストロードだけは会話に割り入った私に批難の目を向けてきたけど、今は無視だ。


「あなた、私に嘘をついてたでしょ」
「まさか!嘘なんか言ってないさ。……言い忘れたことはあったかもしれないけどね」
悪びれもせず言い返してきたドラコを睨みつける。私が何について話しているのか、私がどうして苛立っているのか、ドラコはしっかりと理解している。その上でこの態度。かあっと頭に血が上り、体の横で握った拳に力が入る。
「ハーマイオニーに謝りなさいよ」
「冗談だろ!なんで僕が!」
演技みたいに大袈裟に驚いた素振りをして、周りの笑いを誘う。悪意が滲み出る笑い声に、血が沸る感覚を覚えた。

、よーく考えてごらんよ。悪いのは自分の立場を顧みない穢れた血の方だろ。あいつらこそ、僕に無礼な口を利いたことを謝るべきさ。低俗な自分達が、誇りある純血に歯向かってごめんなさいってね」
「違う!酷いことを言ったのはドラコでしょう!悪いのはあなた!謝るべきなのはドラコよ!」
ピシャリと否定の言葉を叩きつけると、ドラコの顔から薄ら笑いが消えた。青白い顔がみるみる赤くなっていく。


「──絶対に嫌だね」

大きな音を立てて椅子から立ち上がったドラコが、私を見下ろし言い捨てる。
(そんなに睨んだって、ちっとも怖くないんだから!)

ドラコが、父親譲りの極度の純血主義だって知ってる。
プライドの高いこの子が、私なんかに──しかも人前で叱られて怒り心頭だってことも分かっている。
影響力の大きなドラコの機嫌を損ねることの意味も理解している。

それでも、こっちだって一歩も引いてやる気はない。覚悟してドラコの目を睨み返せば──ドラコの灰色の瞳が僅かに揺れた。眉間の皺を深くして、何かに耐えるみたいな顔になった。


のそういう所──大っ嫌いだ」
そう吐き捨てると、ドラコは肩を怒らせながら男子寮へと続くドアへ向かっていく。

「ドラコ!!」
その背中に向かって怒鳴りつけたけれど、最後までドラコが振り返ることはなかった。



譲れないもの
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