声の止まない病
携帯のアラームの音で目が覚めた。時間を見たら、いつもより10分遅い。
夢と現を行ったり来たりな頭をゆるゆると軽く振って、眠気を払おうとして。
「あ、起きてる。おはよ、グミ」
「!!?」
突然かけられた声にドアの方を見れば、制服姿のレン。
――好きだよ。
耳の奥に蘇ったレンの声に、どくどくと心臓が鼓動する。
やばい、泣きそう。
「って、おい!また遅刻するぞ!」
毛布を被った私に、レンが慌てた声をかけてくる。
「グミ、おいグミってば」
うるさいうるさい。
耳に届く声と耳の奥で繰り返される声が混じって、吐き気がしてくる。
レンが好きなのは、私じゃない!!
「いい加減に……」
「うるさい!もう黙ってよ!!」
怒鳴った直後に口を覆っても、音となったそれはしっかりとレンに届いてしまっていて。
しん、と静まり返った空気から自分を守るために毛布を強く引き寄せた。
あの子に向けられた声は、まだ止まない。
title by 失踪宣告