隠れんぼ
「見つけました」
その声に振り返ると、扉を開けたレン君と目があった。
「えー、見つからないと思ったのに」
「30分も探させといて、何言ってんですか」
そう言いながら教室に入ってきたレン君は汗だくで、頑張って見つけてくれたんだなって思ったら自然と笑ってしまった。
「なんですか、ニヤニヤ笑って」
「ニヤニヤなんてしてないよ!」
頬を膨らませて、目の前までやって来たレン君に抗議の声を上げる。
そんな私を見て、レン君は失礼にも大きく息を吐き出した。
「で、あれはなんだったんですか」
「あれ?」
「歌」
その言葉に、開け放った窓を見る。
あまりにも退屈すぎて、暇つぶしにと歌ったんだけど、どうやらそれが導きになってしまったようだ。
「隠れてる最中に歌うなんてあり得ませんよ。……まあ、今回はおかげで見つけられたから良いですけど」
「えへへー」
「言っておくけど、褒めてませんからね。こんな辺鄙な場所に隠れなければ、俺が汗だくになることはなかったんですよ、反省してください」
「反省ってなに……!」
そう言ったレン君に言い返そうとした時、突然腕を引かれてレン君に抱きしめられた。
丁度目線と同じ高さにある金髪が、キラキラ光る。
「いなくなったと思って、すっごい心配したんですからね」
くぐもって聞こえる声は少し震えていて、きゅっと胸が締めつけられる思いがした。
「うん、ごめんね。反省します」
可愛い後輩に不安がらせて、申し訳ないことをしてしまった。
ぽんぽんと背中を叩きながら、ごめんねをもう一回言って、
「見つけてくれてありがとう」
そう伝えたら、グミ先輩の馬鹿って小さな声が返ってきた。