いい夫婦の日
「レン、コンビニ行くんならついでにあれ買ってきて!」
「おー」
出かけ際におこなわれた会話に、隣まで来たレン君を見上げる。
「あれって?」
「オレンジジュース。果汁100%のやつ」
悩む素振りも見せずに答えが返ってきて、すごいねぇ…と小さく零す。そうしたら、レン君はその声を拾い上げて「何が?」と訊ねてきた。
「あれだけで伝わるの凄いなって。ほんとにお互いのこと分かってるんだねぇ。さすが双子」
「別に、大した事じゃないし」
そう言えば、レン君は少し恥ずかしそうにそっぽを向いた。それが微笑ましくて、くすくす笑う。
だけど、同時に心の中には面白くないなって気持ちが少しあった。
(私なんかより、ずっとお似合いだな。)
そんな気持ちに気づきたくなくて、レン君をからかおうと顔を上げようとして、唐突に手を握られた。
どうしたのかと顔を上げれば、口をへの字にしたレン君と目が合った。
「グミのことも分かってるつもりだけど」
「え?」
レン君の言葉に目を丸くして、
「俺が彼女にしたいのはグミだけだからね」
にこりと笑ったレン君の掌から伝わってくる温かな体温に、ふにゃりと泣き笑いになってしまった。