きみならいいよ
「油断しすぎよ」
「ああ、まったくだ」
お腹に跨ったままルフィを見下ろして、溜め息とともに声にする。
それに対してルフィは、首に収穫鋏の切っ先を突きつけられているのに、いつものようにニシシと笑う。なんて緊迫感のない顔。
「今なら私、あんたのこと殺せるわ」
その顔が態度が気に障って、ほんの少しだけ鋏を握る手に力を込めた。
すう、と黒い目が細められる。
ああ、怒られるかしら。いくら相手が温和な船長とはいえ、これは立派な謀反だ。
自分からやったことなのに、今更ながら背中を冷や汗が伝う。
「ナミならいいぞ」
にぃ。口の端を上げ、挑むような、けれどどこか全てを受け入れるような笑みで言われた言葉。
瞬きも呼吸も忘れて、じっとルフィを見つめる。
「ああ、わりぃ違った。ナミがいい」
そう言って、すっかり固まっていた鋏を持つ手を一回り大きな掌が包む。
途端。気がつけば、反射的に手を振り払っていた。
「なに、言ってんのよ。そんなの、絶対にお断りに決まってるじゃない」
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