蜜柑合戦
「ルフィーっ!!!」
「いてえぇっ!!!」
航海士の怒鳴り声と船長の叫び声は、船中に響き渡った。
その声に思い思いの場所にいた船員達は一瞬だけ動きを止め、すぐに何事も無かったかのように各々の行動を再開した。
そして、当の航海士と船長はと言うと。
「あんたねえっ、勝手に蜜柑を食べるなって何度言えばいいの!?いい加減学びなさいよ!」
目を吊り上げてそう怒鳴ったナミは、頭にたんこぶを膨らませたルフィの頬を左右に引っ張る。
「はっへよー」
「だってじゃない!」
ルフィの不明瞭な言葉を遮って怒鳴り、それと同時にルフィの頬から手を放す。
「ていうか、蜜柑なら昨日買ったじゃない。蜜柑食べたいならそれ食べなさいよ。サンジ君には言っておいてあげるから」
蜜柑のつまみ食いを防ぐために昨日寄った島で買った大量の蜜柑のことを思い出し、ナミは嘆息しながら言葉を紡ぐ。
「あれじゃ嫌だ」
「は?」
「おれはあれじゃなくてナミの蜜柑が食いたいんだ」
しかしルフィは断固たる口調で拒否の言葉を返す。
「だって、ナミの蜜柑の方が美味いんだぞ!!」
そして誇らしげにそう言って、言葉を無くしたナミに満面の笑みを向ける。
その笑顔にナミの頬が瞬く間に朱に染まった。
「そ、そんな事言っても絶対あげないわよ!」
「なんだよ、ナミのケチー」
「っ、るさいっ!!」
頬を赤く染めながら怒鳴るナミに、ルフィは不満そうに頬を膨らませたのだった。