目覚めの口づけ
ナルトに好きと言った。嘘だと言われた。
けれど、その言葉にはあの雪の中で言われたものとは違って苛立ちとか不信とは感じられない。ただ、ひたすらに戸惑いを感じて、もう一度好きと繰り返す。
「夢?」
そうしたら返ってきたのが、これ。思わず吐きかけた溜息を飲み込む。あと何度言えば信じてもらえるかな。少し挫けそうになりながらもこの胸の中にある想いは今にも溢れそうで、意地でも理解させてやるとやる気が湧き上がってくる。
「ナルト、好き。あんたが好き。あんただけが好き」
好きを口にする度にナルトの顔は赤く染まっていき、ちょい待ってと赤面した顔を片手で隠した。
「信じた?」
距離を埋めて問いかけみたら、ナルトは指の隙間からこちらを見てきた。その目にはまだ疑いの色が見えた。
「殴ってくれる?」
「いやよ。代わりにキスしてあげる」
要求を切り捨てて、顔から手を離して、さらに顔を赤くしたナルトの頬に手を添える。
「キスなんてされたら、ますます現実か疑うんだけど」
「大丈夫よ。いい夢って、寸前で起きちゃうものだから」
それはそれで泣くな。くしゃりと力無く笑いをつくりながら、ナルトは私の顎を指で救う。
こいつは現実だって分かっても泣くのかしら。ごつごつと骨張った手に少しばかり心拍数を高めつつ、近づく気配に瞼を下ろした。