陽だまりの先
最近、気づいたことがある。
金色が陽光を受けて輝く。
なんとなしに見た窓の外にその煌きを見つけて、思わず足を止めた。
木の葉にだって金髪の人はたくさんいるけど、周りの空気までキラキラと輝きを持っているのは私の知る限り1人しかいない。
すっかり上忍ベストを着こなした背中に向けて、唇を動かしてみた。こっち見ろ。そんな思いを少しだけ込めて。
そうしたら――ゆっくり、ナルトが振り返った。
真っ直ぐに見つめてきたナルトは、それはそれは嬉しそうに笑っていた。
最近気づいたこと。それは、私がナルトを見ていると、必ずあいつはそれに気づくということ。
「サクラちゃん!休憩中?」
「そうよ。ねえ、どうして分かるの?」
「え?なにが?」
トンッと軽い音を立てて屋根の上に降り立ったナルト。その様子を窓枠に肘をついて見つめていた私の唐突な問いに、ナルトはきょとんと空を閉じ込めた瞳を丸くした。その表情に今ではあまり見られない子どもっぽさを感じて、表情が柔らかくなる。
「さっき、なんで私のことを見つけられたの?」
「えー…うーん……俺ってば、昔から視線には敏感なんだってばよ」
少し悩んだ後、ナルトが言う。
その「昔」という言葉にちりっと胸の奥が焼けて、そして少しだけ眉間に皺が寄った。
目敏くそれに気づいたナルトはわたわた慌てて言葉を続ける。
「今は平気だってばよ!今はあったかいのが多いから。……まぁ、たまになんかめっちゃくちゃ熱いのもあるけど」
「…ふぅん、あっそ」
ぽりぽりと頬を?きながらのナルトの言葉に安心して、そしてさっきとは全然違う種類の熱が胸を焼いた。
だけど今度は顔に出るのを抑えて、もう一つの疑問を口にする。
「それにしても、すっごい笑顔で振り向くのはなんでよ?いつもよね?」
「だって、サクラちゃんだって分かるんだもん」
ナルトが即答した理由に、ドキッと胸が跳ねた。
落ち着け、まだ赤くならないで。自分に言い聞かせていたら、こっちの気も知らないでナルトはにへらと笑った。
「サクラちゃんの視線はさ、あったかいだけじゃなくてすっげえ優しいの。あ、サクラちゃんだなーって絶対分かんの」
そう言うナルトがあんまり嬉しそうに幸せそうに笑うものだから、自分への暗示は止まってしまい、それからじわじわと体温が上がっていく。
「……なにそれ」
「愛の力なんじゃねえのかな」
なんとか返した声にナルトがさらっと寄越してきた言葉が、熱の進行を加速させる。
「?サクラちゃん…ぶっ」
「見んなバカ」
ナルトの顔に紙束を押し付けて、抗議の声は黙殺した。
苦々しく吐いた勢いでさえ熱く、どうしようもない自分に頭を抱えたくなる。
熱はしばらく下がりそうにない。