だるまさんが転んだ
はい、ナルト!右手が動いた!!」
サクラの鋭い声に、斜め前にいたナルトはえーっと声を上げた。動いてないってばよ!サクラちゃんの見間違い!!不満全開の声に、離れた場所で見ていたイルカ先生が口を開いて、
「黙れ、ナルト」
それより先に、サクラが言葉と視線で黙らせた。うわ、怖ぇ。
渋々とサクラの元へ向かうナルト。走れ!イルカ先生の怒号にべーっと舌を出して、少しだけ足を早める。
ほら、手」
ようやく隣まで来たナルトに、サクラは自分の左手を差し出した。
その手を見て、ナルトが慌てて右手をズボンで拭う。そんなナルトを見るサクラの視線の冷たさがヤバイ。
「あんたの手、綺麗なんでしょうね?」
「ちゃんとトイレの後に洗ったってばよ!」
「当たり前じゃない!!んなことで威張んな!」
怒鳴り声を上げて少し躊躇いながらも、サクラはナルトの右手を握る。
おーおー、阿呆みたいにニヤけやがって。
かなり不機嫌そうな顔のサクラの隣で、ナルトは締まりなく頬を緩ませている。
「よし、続けるぞ!」
イルカ先生の号令にサクラは表情を引き締め、こちらに背を向けた。
それを見て、周りの空気もぴんと緊張感を纏った。
誰もが息を潜めてサクラが言葉を発するのを待つ中。ただ一人、馬鹿みたいに幸せそうな顔のナルトだけは、サクラと繋いだ手をぶらぶらと揺らしていた。
「だるまさんが転んだ!」