初めて見たとき君は前髪がとても長くて、一人で泣いていた。
それでとても気になったのだけど、俺は話しかけることができなかった。
次に見たとき桃色の髪のてっぺんにリボンが結ばれていて、ぎこちなくも君は笑っていた。
その笑顔はまだ頼りなかったけど、いつの間にか強さを秘めるようになって。
気づけば、俺はその瞳に惹かれていっていた。
木が鬱蒼と生い茂った森、その中でも一際背の高い木の上にいる俺とサクラちゃん。
サクラちゃんは枝の上に立って、遠くを見遣っている。
凜とした表情で、真っ直ぐに前を見つめる碧の瞳に息を止めて魅入る。
「……なに?」
訝しげに問う声で我に返れば、サクラちゃんが眉をひそめて俺を見ていた。
強い光を宿したその瞳にまた魅入って。
「サクラちゃんって格好いいってばよね」
するりと言葉が口から出た。
サクラちゃんが目を見開き、それから不服そうに眉を寄せる。
「なにそれ、女の子に格好いいとか。全然嬉しくない」
「でもさ。サクラちゃんは格好いいけど、でもそれよりももっと可愛いってばね!」
「!?なっ、なに言ってるのよ!!」
馬鹿と怒って勢いよく前を向いたその横顔が赤く染まっていて、それはそれはとても可愛いと思った。