労いの代わり
最近、彼ら、元第七班の男三人が任務から帰ってくると軽い騒動が起きるようになった。
「ナルトさん、お疲れ様でした!!」
女の子の黄色い声に足を止めれば、向かう先に数人の女の子に囲まれたナルトの姿があった。
労いの言葉と可愛く包装された包みに、最初は戸惑っていたナルトも頬を染めて照れ臭そうに笑う。
この光景を見るのは、何回目だろう。
胸の中で沸き上がってきた苦い気持ちを吐き出したいのを我慢して代わりに抱えている書類を強く握り、その場から離れようと踵を返す。
「サクラちゃんっ!!」
しかし、背中にぶつかった声に思わず舌打ちをしてしまった。
そのままでいるわけにもいかず、近寄ってくる足音に後ろを振り返り、数個の包みを抱えて走ってくるナルトと対面する。
「サクラちゃんっ、ただい」
「サスケ君とサイは?」
「……任務報告書出しに行ったってばよ」
ナルトの言葉を遮ると途端にナルトは不満そうな顔になり、ぼそぼそと小さな声で言葉を返してきた。
「……今日も随分貰ったのね」
「へ?あ、あぁ、うん」
ナルトが抱えた包みを、次いで睨むという表現が近い目でこっちを見てくる女の子達をナルト越しに見る。
「……なに?」
そして、何か言いたげな目で見下ろしてくるナルトを見上げて、睨むようにその青い目を見返す。
すると、ナルトは困ったように視線を宙に泳がせて、
「サクラちゃんからはないの?」
「なんで私が」
遠慮がちに紡がれた言葉に短い言葉を返すと、ナルトは眉を下げて空いていた手で髪を掻きながらそうだってばよねーと残念そうな声で言った。
その姿に私が悪いように感じて、数秒迷った後。
「今回の任務、結構大変だったみたいだし……一個だけワガママ聞いてあげるわよ」
「ほんとっ!?」
その言葉にさっきまでの表情が嘘だったかのように表情を一変させたナルトに、反射的に身を引き、
「──っ!!?」
背中に回った力強い腕に思考が停止した。
足元から聞こえた、いくつもの包みが廊下に落ちた音に我に返り、罵声と共にナルトの体を押そうとその胸板に両手を付く。
「ちょっとだけこうさせて」
それを拒むように少しだけ強くなった腕の力と切なそうなナルトの声に、腕に込めた力が一瞬で弱くなった。
小さく息を吐き出して、腕を下ろす。
すると、また少し腕の力が強くなって、小さく嬉しそうな笑い声が降ってきた。
何か一言言ってやろうと視線を上げると、柔らかく細められた青い目と視線が交わった。
不覚にもその目に胸が高鳴って、言葉が霧散した。
「ただいま、サクラちゃん」
「……おかえり」
はにかみながらそう言ったナルトに、口ごもりながらなんとか四文字の言葉を返す。
そして、それを聞いて頬を上気させながら笑ったナルトから視線を逸らした。
それらのやり取りを始終目撃する者が居たことに私が気づいたのは、その十秒後のことだった。