ぎゅうっとお腹を締め付けた細い腕に、ユミルは目を丸くした。
「だめ。ユミルは私と帰るの」
そして、鈴を転がすような声がいつもよりも硬いことに気づくと、更に力を込めた腕の主へと目を向ける。
「クリスタ?」
「だめだからね」
きゅっと可愛らしい小さな顔は気難しいしかめっ面。
繰り返される言葉に、ユミルは助けを求めるように目の前の人物を仰ぎ見る。
「えっと…クリスタ?なにがだめなの?」
「ベルトルトには教えない」
戸惑った様子の問いかけにクリスタは敵意を隠そうともせず、それを聞いたベルトルトはその巨躯を縮こまらせた。
「クリスタ、どうしたんだよ?女神は誰にでも優しいんじゃなかったのかよ?」
「ベルトルトだけはだめ。だって、ユミルを連れて行っちゃうんだもん」
「なんだ、それ。私はどこにも行かないよ」
ほら、帰ろうぜ。
差し出された掌に、クリスタはそっと自分の手を重ね、そしてぎゅっと力の限りに握りしめた。
今度こそ、ユミルは連れて行かせないんだから。