眠れないよダーリン
日差しが気持ちいい。
燦々と太陽が降り注ぐ裏庭のベンチに座り、うんと背伸びをする。
そうすると自然と欠伸が出てしまった。
「眠たいのか?」
問いかけの声に隣を見れば、本から顔を上げたエースさんと目があった。
「そんなことないですよ」
そう言った途端、また欠伸が出て、エースさんがおかしそうに声を殺して笑う。
それに対して恥ずかしさから頬を染め、眠気を覚ますために闘技場にでも行こうかと腰を上げようとして、
「デュース」
腕を引っ張られ、体は横へ傾く。
そして次には青い空と、覗き込むように見てくる同じように青い瞳が視界に入った。
頭の下にはベンチとは違って、丁度良い固さのなにかがある。
止まってしまった思考を動かすためにぱちぱちと瞬きをして、
「!!?」
エースさんに膝枕をされているということに気がついて、ぱくぱくと口を開閉させる。
「しばらく寝たらいい。最近忙しいし、寝不足なんだろ?」
慌てる私とは対照的にエースさんはいたっていつも通りで。
気遣うような視線と声に、彼の親切心を無下にすることは出来なくて。
「……膝、お借りします」
言って、さすがに仰向けのままではいられなくてエースさんに背を向ける形で横になる。
「お休み、デュース」
「……お休みなさい」
エースさんのひどく柔らかな声に、ぎゅっと目を瞑る。
だけど、どくどくと鼓動する心臓の音が気になって、到底眠りに落ちるなんてできそうになかった。
title by ドロシー