ぽたぽたとアリスの髪先から落ちた滴がカーペットに落ちては吸い込まれる。
だけど当の本人は全く気にせず、そのままベッドに直行しようとするから慌てて止めてソファへと手を引っ張っていく。
そしてアリスが肩に掛けていた(しかし全く意味のない)タオルを借りて、髪から水分を取っていく。
ギルが俺がやるとか言ったけど、他のタオルを持ってくるように言いつける。
「あ、ゆっくりでいいからな」
出て行く背中にそう付け足して。
「アリスってほんとに髪長いよね」
手の中のタオルは水分を吸ってすっかり冷たくなっている。
ギルにはゆっくりでいいと言ったけど、そろそろ戻ってこないだろうか。
じゃないとアリスの髪が乾かせない。
「そうか?」
「そうだよ。乾かすの大変だよー」
「じゃあ、切るか」
鋏あるか?とあっさりと聞いてくるアリスに俺は一瞬呆け、それから笑う。
「だめだよ。アリスはこのままがいいの」
「?だが、長いと面倒なんだろ?」
「そうだけど、絶対切っちゃダメ」
わけが分からないというように眉を寄せるアリスに笑いかけて、ギルが戻ってくるのがもう少し遅ければいいと思った。
アリスの髪を乾かす時間は二人きりになれる大事な時間だから、減らしたくなんて無いんだよ。