50点の告白
「鏡音君って私のどこが好きなの?」
出会った翌日から挨拶をするのと同じように好きだと言ってくる後輩にそう問えば、彼はスカイブルーの瞳を丸くして首を傾げた。
「それを答えたら、付き合ってもらえますか?」
「答えによるわね」
その返答に、前の机に腰掛けた鏡音君が目を輝かせる。
机の上で組んだ指に顎を乗せながらそれを見て、でも、と続ける。
「つまらない答えだったら、顔面にグーパンね」
「……それ、酷くないですか」
にこりと笑いかけると鏡音君が少し固まって、それから考え始めた。
窓の外から差し込む赤い日差し。それを受けた金の髪は、電気の付いていない教室で不思議な明るさを見せている。
「えぇと、ですね」
「うん、なに?」
それをぼぅっと眺めていたら聞こえてきた声に問い返す。
ほら、言ってよ。そう促すように彼の目を見つめて口端を上げる。
そうすれば鏡音君はいつもの懐っこい笑みを浮かべて、
「分かりません」
と、答えを口にする。
「わかんないけど、グミ先輩のこと大好きですよ。愛してます」
そうして続けるのは、もう何度聞いたか分からない言葉。
笑顔の彼に力なく息を吐き出し、ちょいちょいと手招きをすれば、鏡音君はわくわくした感じで私に顔を近づけて。
――ぺしんっ。
「ってぇ!!?」
デコピンが決まる小気味いい音の直後に鏡音君が悲痛な声を上げた。
「50点。不合格よ、鏡音君」
笑って告げて、薄暗い教室の中で一際輝く金の髪に目を細めた。
(本当は50点満点だけど、まだ応えてあげないわ)
title by はちみつトースト