「偶にさ、死にたいって思うんだよな」
何の脈絡もなく、そういえばって感じに口にした言葉に、カスミは目を丸くして動きを止めた。
「なーんて、」
「困るわ、それは」
冗談と続けようとして、それを遮った声に口を止める。
「あんたが居なくなったら、誰が私のご飯を作るのよ」
「……は?」
カスミの言葉に思わず疑問符が口から出る。それは自分でも間抜けな声だと思ったけど、それくらいカスミの答えは予想外過ぎた。
「だから死んだりしないでよ。私より先に死んだら殺すわよ」
死んだら殺せないだろ。
反射的にそんなことを考えたけど、向けられる真っ直ぐな視線に自然と口元が緩む。
「分かったよ」
そう答えたら、随分と胸がすっきりした気がした。
(君のために生きるっていうのも良いかもしれない。)