悩
「俺はグミが好きだよ」
俺を真っ直ぐに見て、いや睨みつけてそう言ったのは、グミと同じ色の目を持った、彼女の従兄弟。
向けられる目から、グミヤが言った好きが俺が抱いているのと同種のものだと分かってしまった。
「……でも、お前とグミは」
「従兄弟だよ」
俺の言葉を続けたグミヤは、だから?と挑発的に問うてくる。
「そんな理由でお前にグミを譲ると思ってんの?」
「……そんな理由、じゃないだろ」
おかしいだろ。その言葉は口には出せなくて、心の中で言う。だけど、グミヤはハッと笑うと射貫くような目で俺を見て、
「おかしいって?」
俺の心の中を当ててみせた。
それに動揺を隠せずにいれば、グミヤは更に爆弾を投下してくる。
「お前、自分の姉貴にもそう言うわけ?」
目を、見開く。
なんでグミヤがそれを。問おうとして、けれど口の中がカラカラに乾いて声が出ない。
思考回路が乱れた頭の中では、忘却しようとしたリンの声が流れ出す。
家族愛を超越した感情を告げてきた声を。
「……リンは関係ないだろ」
「まあ、どうでもいいけどよ。……でも、アイツは俺と一緒だよ。アイツはちょっとやそっとじゃお前のこと諦めないだろうな」
言って、グミヤはほくそ笑む。
「精々、悩んで悩んで悩みまくれ」