笑ったらきっと可愛いだろうな。
最初にそう思ったのは、俺だったのに。
「ナミネ」
誰かが呼んだ彼女の名前に、自然に視線が声のした方へ向く。
そして瞠目。
視線の先には、いつものようにスケッチブックを抱えたナミネと、ソラ。
ソラが何かをナミネに言うと、彼女は顔を真っ赤にしてソラを見た。(ナミネは肌が白いから、赤いのが遠くからでもよく分かる)
そして赤い顔のままソラに対して言葉を返す。
しかしソラは上手く躱しているようで、すぐにナミネは頬を膨らませた。
それを見て笑うソラ。
それにつられて、笑うナミネ。
(ずるいよ、ソラ)
ナミネの笑顔を前にして胸が軋んだ音を立てた。
ぎゅっと服の上から握り、口で息を吸い込む。
(ずるい)
彼女を見つけたのは俺が先なのに。
なのに、お前はあっさりと、簡単に奪っていって。
(ずるい)
胸の中のどろどろした感情が気持ち悪い。
唇を噛んだら、口の中で鉄の味が広がった。