知らなかった一面

魔法薬学の授業に向かう途中、廊下の反対側からマルフォイ達が歩いてくるのに気がついた。隣を歩くロンとハーマイオニーの纏う空気がピリッと張り詰める。
向こうもこちらに気づいたようで、途端に表情が険しくなった。
お互いに歩く速度を変えないまま進み、教室に続く階段の前で鉢合わせた。

「ポッター、邪魔だ」
「僕らの方が先に着いただろ。そっちが譲れよ」
張り合わなくても良いことなのに、マルフォイが突っかかってくるからこっちも言い返してしまう。
お互いに譲らず、数秒の間バチバチと睨み合う。ロンとハーマイオニーも、クラップとゴイルと牽制し合っている。

「……なぜ僕がお前らなんかに」
「は?なに──うわっ」
忌々しそうに吐き出した言葉に聞き返すよりも先に、マルフォイは僕を押し退けて無理やり階段を降りていく。
少しよろけた僕の背中をハーマイオニーが支えてくれた。

「おい!」
ロンが怒鳴ったけど、マルフォイは振り返らない。クラッブとゴイルが勝ち誇った目をしながら、マルフォイの後を追って行った。
「あいつ、全然反省なんてしてないじゃん!」
ロンが鼻息を荒くしながらそう言った。その言葉に昨日のを思い出す。


『あいつにも、必ず謝らせるから』
ハーマイオニーに対するドラコの侮辱的な発言を知って、はそう言った。

静かだけど、滲み出るほどの怒りが込められた声。
初めて会った時から、はいつも笑顔で元気で優しくて──そんな彼女がこんな風に怒るのかと驚いた。


、マルフォイと話したのかな」
さっきマルフォイが零した言葉を思い返す。もしかしてあの言葉の続きは、「謝る」だったのだろうか。

「どうでしょうね。まぁが話していたとしても、マルフォイがそう簡単に謝ってくるなんて思わないけど」
「そうそう。ヤツからの謝罪なんてハナから期待なんてしてないさ」
ハーマイオニーは肩を竦める。ロンも大きく頷いて、階段を降りていく。
「ハリーも行きましょう。授業が始まっちゃうわ」
「……うん」




(そういえば、ってマルフォイのことを名前で呼んでた。随分親しげな話し方だったな)
ハーマイオニーに続いて階段を降りながらも、頭の片隅にはのことが残っていた。