この声は届くのかしら
夏の太陽が燃える今日この頃。
開け放った窓の外から聞こえてくるのは、いたって平和な里の音。
元気な子どもの声に本を捲る手を止める。
「んー……」
腕を上げて背中を反り、大きく息を吐き出す。
そのまま体の力を抜いて本の上に突っ伏し、窓の外に広がる青空を眺める。
「……無茶してないかしら」
不意に口をついて出た言葉に自分で驚いた。
そして、頭の中に現れたナルトの姿に瞼を閉じる。
昨日からナルトは任務に赴いている。
今回の任務はSランク。
命を失う確率がとても高い危険な任務。
そんな任務を前にしても、ナルトはいつもの様に笑っていた。
サクラちゃんは心配性だってばよなんて言って。
絶対帰ってくるってばよって言って、私を抱きしめて。
「――あんまり怪我しないでよね」
瞼を上げて多分叶わないであろう言葉を口にして、ナルトが帰ってきたら叱ってやろうと心に決めながら小さく笑った。