ここにいるわけ
気がつくとそこはベッドの上で、見慣れた天井にデュースは自分がまた戦線離脱をしたことを理解した。
果たしてこれで幾度目のことだろう。
まだぼんやりとする思考で自分の帰還率がどれ程のものか考えてみれば、すばらしく低い数値が叩き出され、胸中にどんよりと重たい感情がのしかかってきた。
「デュース?気がついたのか?」
名前を呼ばれて視線を動かすと丁度部屋に入ってきたエースと目が合い、常時よりも重たく感じる体を起こす。
「体は何ともないか?」
「はい。ご心配をおかけしました」
眉を下げたデュースの心底申し訳なさそうな様子に、隣のベッドに腰を下ろしたエースは彼女を安心させるように微笑む。
「いや、デュースが無事で良かったよ」
そんな彼の優しさにデュースが嬉しさとともに尚更気を遣わせてしまった自分を情けなく感じた時。
「作戦の方は問題なく終了したよ」
その言葉は、ただでさえ重かったデュースの気分を下げるには十分すぎる威力を持っていた。
「……そうなんですか。何か報酬はいただけましたか?」
「あぁ、エクスポーションをもらったよ。シンクやジャックはグロウエッグが欲しいとか言ってたけどな」
その時のことを思い出して呆れたように言うエースに、デュースはぎこちなく笑みを形作る。
何故、自分がマザーに選ばれたのか。
それは事あるごとにデュースが考えることだった。
アギト候補生としてマザーの子どもとして、他の11人と一緒に育ってきた。
戦うための武器を選んだ時、自分が手にしたのは笛で、殺傷力なんて微塵も無いそれに勿論戸惑った。
なんとか攻撃手段としての笛の使い方を見つけたは良いものの、演奏に集中してしまって敵の攻撃を避けられずに戦線離脱の繰り返し。
その結果、自分に与えられたのは後方支援という役割だった。
そこは広い視野で戦局を見、味方の支援をする大事な場所。
前線に突撃していく仲間の背中を見るしかできない安全地帯。
負傷しながらも前へと進んでいく彼等の背中を見ながら、デュースは何度も自問する。
自分の存在理由、存在価値を。