しあわせさがし
あったぁっ!!」
青空の下、興奮した子供の声が響き渡る。
「哀ちゃんっ、四つ葉のクローバーあったよーっ!!」
声がした方を向けば、少し離れた所で吉田さんが頭上に上げた右手を勢いよく振っていた。
良かったわねと言葉を返すと彼女は嬉しそうに笑い、近寄ってきた円谷君や小嶋君にその手に握った物――転校するクラスメイトに手向けるために、かれこれ二時間近くも探していた四つ葉の植物を見せた。
「こんな雑草一つで幸せになれるなんて羨ましい限りね」
足下の緑の絨毯に目を向けて嘆息と共にそんな言葉を小声で吐き出し、
「そう言うなって」
不意に頭上から降ってきた声に顔を上げ、呆れたような表情の江戸川君を睨みつける。
「悪いかしら?」
「別に悪かねぇけど、あいつら必死で探してたんだから絶対に言うなよ」
私の前にしゃがみ込み、盛り上がっている三人を盗み見ながら小声で言う彼に息を吐く。
「分かってるわよ」
そう返し、場所を変えようと立ち上がろうとして、
「灰原」
「なに……?」
名前を呼ばれ、彼を見る。
そして目の前に突き出された、彼の手に握られた四つ葉に目を丸くする。
「これで幸せになれよ」
彼は薄く頬を朱に染めてぶっきらぼうにそう言うと、私の手に四つ葉のそれを無理矢理握らせた。
手の中のそれを見下ろして、ゆっくりと視線を上げ、
「馬鹿ね」
「……お前、人の好意と努力を何だと」
ひくりと頬を引き攣らせた彼に、少しだけ口元を緩めた。
(ほんとに馬鹿ね。)
不機嫌な表情をした江戸川君からこっちへと駆けてくる元気な三人に視線を向け、目を細めて笑う。
(こんなの無くても、貴方達が居るから、私は十分幸せなのよ?)
心の中でそう呟いて、手の中の四つ葉を緑の絨毯へと落とした。