好きだよ。
お互いにお互いのことはそこそこ分かってると思う。一緒にいた時間は短くないし、本音をぶつけ合ったことだって少なくないから。
でも、お互いにずっと一つの気持ちには気づけなかった。そのせいで随分空回ったりすれ違ったり傷つけたりして。
「まぁ、それもこれでお終いか」
「そうでもないかもよ」
サトシの言葉を肯定しようとして、ふと考えて否定の言葉を返す。
そうするとサトシは何で、と首を傾げた。
「だって、お互いこういう気持ちには鈍感みたいじゃない。また繰り返すかもよ」
散々鈍感と思っていたサトシだけでなく、自分もその類の気持ちに疎かったことを認めるのは少々癪だけど。
「……なによ?」
私の言葉になんの反応も無いことを不思議に思ってサトシを見ると、柔らかく笑っていたから驚いた。
「なに、笑ってるの?」
「そうなるかもって思って」
「それで笑う?」
意味が分からなくて眉を寄せたら、サトシが繋いでいた私の右手をさっきまでより強く握った。
「今までみたいにすれ違ったり傷つけたりしても、それでもきっとカスミのことを絶対に離さないだろうなって思ったんだよ」
真っ直ぐに私の目を見てそんな台詞を言ったサトシに呆け、少ししたら笑いがこみ上げてきた。
「私もサトシの隣は誰にも譲ってあげないわ」
そう言い返して、穏やかな温もりを伝えてくる自分より大きな手を握り返した。
これから先もずっと、君が好き。