隣に
「めぐっぽいどです!!」
それが、グミが俺に向けて言った最初の言葉だった。
彼女の容姿があまりにも某超時空シンデレラそっくりだったから、思わずその名を口にしてしまった俺にグミは怒ってそう言った。
頬を膨らませて、ムキになって抗議をしてきたグミ。その反応が楽しくて、最初のうちは随分とそれをネタにからかったりしていた。
しかし。
「グミちゃん、またミリオン達成だってね」
凄いねぇと、ストローでオレンジジュースを吸いながらリンが言う。
その言葉に苦い味が口の中に広がって、それを消すためにバナナジュースを飲む。だけど苦さは薄れることがなかった。
デビュー当初からグミの性能の良さには驚かされていた。滑舌が壊滅的だった俺達とは天と地ほどに違う、滑らかな滑舌には随分と驚いたものだ。
そして某曲を切欠にグミはその実力を発揮させて、今ではミリオン曲が何曲も。(ちなみに、最高再生数は俺より上だったりする。)
「グミちゃんも超時空シンデレラだったんだねぇ」
丁度思っていたことをリンが言ったから、そうだなと詰まりながら言葉を返す。
ここのところ多忙な様子のグミを脳裏に思い浮かべて、ストローの先っぽを噛んだ。
見た目は年上だけど、どこか抜けてて可愛い後輩だと思っていたのに。
いつの間にかずっと先を歩いて行っていた背中に、どうしようもない焦りが湧き上がる。
だけど焦ってもただ空回りをするだけで、そうしたらまた焦って、苛立って。
終わらない、悪循環。
「レーンー、黙り込んじゃってお姉ちゃん怖いんですが?」
からかいを含んだリンの声。
顔を上げれば、俺と同じ青い目が心を見透かすように真っ直ぐに見ていた。
「ま、焦らずに行こうよ。そうすればグミちゃんにも追いつけるって」
にかっといつもと同じに笑うリンに、荒れていた心が平静を取り戻していく。
「……追いつくじゃなくて、追い抜かすだろ」
「おぉ、言うじゃん。それでこそ、私の弟だよ」
にっと笑って拳を突き出してきたリンに、同じように唇の端を上げながら自分のそれをぶつけた。
先に進めばいい、すぐに追いついてやるから。
そして、一人きりで頑張る君の背中を支えてあげよう。