「好き」と一言
グミが好きだと自覚したのはずっと前。
今まで恋人の関係になりたいと願ったことがない訳じゃない。だけど友達のポジションが居心地良くて、その関係を自ら壊すことが怖くて。
どんどんと増えていく想いに気づかないふりをしていた。
でも、もうだめかも。
「また呼び出しかよ?」
「そうみたい」
下駄箱の前に佇むグミに挨拶もせずにそう言うと、グミは困ったように笑った。
「昼休みに屋上って、まぁたベタな場所で……モテるやつは大変だな」
「もうっ、からかわないでよ!」
その笑みとグミの手にあるメモ紙を見て、自分の下駄箱から上履きを出しながらからかい口調で言った。
腹の底で何かが蠢く感覚をひたすら無視しながら。
最近、グミが告白をされることが多くなった。
その頻度が増すにつれて、俺の胸の中で焦りと不安も増していった。
「グミ、時間良いのか?」
「……ん、行ってくる。先に食べてて良いよ」
自分の席でぼーっとしていたグミに声をかければ、少しの間の後に立ち上がった。
そして暫くなにか言いたげに俺を見たかと思うと、結局何も言わずにドアへと向かって行く。
離れていくグミの背中を見ていると、もう俺の隣に戻って来ないんじゃないかという不安が襲ってきた。
それはもう何度となく感じた不安で、いつもは拳を握ることで押し殺していたのに。
だけど、不安を抑えられるほど、俺の心にはもう余裕がなくて。
「グミ!」
ドアに手をかけたグミが、俺の声に振り返る。
俺を映すその瞳はどこか期待をしているような気がした。
たった二文字の言葉に、ありったけの想いを込めるから。
どうか、どうか、受け止めてください。