さりげない仕草
ちらりと隣を盗み見ると、すぐ横に座ったサトシがピカチュウと戯れていた。屈託のない笑顔でピカチュウと話すサトシに知らず口元が弧を描く。
チョケッとかわいらしい声に下を向けば、膝に乗せたトゲピーが私に向けて手を伸ばしていた。その様子が愛しくて、ますます頬は緩む。
「高い、たかーい!」
言いながらトゲピーの小さな体を宙に持ち上げれば、トゲピーがご機嫌な声を上げる。
「あ、カスミ」
「なに?」
サトシの声に腕を下げながら顔を横に向けると、顔の横にサトシの手が伸びてきた。
頬を掠った温もりに、体が固まる。
しかしそんな私を余所に、サトシは私の髪を触る。
「なっ?!」
「葉っぱ、付いてたぞ」
そう言って一枚の葉を私の目の前に示してみせたサトシに、がくっと一気に体の力が抜ける。
(いいいいったい、なんの期待をしたのよ私はぁああっ!!)
そして顔を赤くしながら、激しい自己嫌悪に襲われた私の耳に届いたのは。
「カスミの髪って、結構さらさらなんだな」
さっきまでとは比にならないくらいに、顔が熱を帯びたのが分かった。
君の無意識な言動は反則過ぎる。
お願いだから、これ以上私の心臓に負担をかけさせないで!