横顔
「あんたって、いつも何処見てるのかしらね」
そう零した私に、隣でピカチュウと戯れていたレッドが小首を傾げた。
洞窟の外から聞こえてくる吹雪の音に紛れるように小さく言ったのに拾い上げるなんて、いい耳してるわね。
「何処って?」
その問いに悴んだ手に白い息を吐きかけた後、だってさぁと口を開く。
「あんたの目って、力無くて死んでる感じじゃない。あと、何考えてるかわかんない」
手を摩りつつそう言った私を、レッドは微妙な表情で見てくる。その不満げな目に何よ本当のことじゃないと返せば、ふて腐れてピカチュウの頬っぺたをぐりぐりし始めた。
(いつも、こんな感じに分かりやすかったら良いのにねぇ)
ピカチュウが抗議の声を上げるのを聞きながら考え、大分感覚の戻ってきた手にもう一度息を吐きかける。
そうして、でもと囁くように言えば、レッドはまた器用に拾い上げて目で続きを促すから、
「でも、バトルの時だけは目つき変わるわよね」
そこで切って、レッドの黒い目を真っ直ぐに見つめる。
「その時のあんたの目、結構好きよ」
言って笑うと、レッドは大きく目を見開いて慌てて顔を背けた。
どうもと小さく吐き出したレッドの頬は少し赤くて。
いつもより幼く見えるその横顔も好きだと思った。