その笑顔が
視線の先でレッドが笑った。その笑顔が自分に向けられたわけでもないのに、心臓の鼓動が急加速した。
眩しいくらいの君の笑顔から、目を逸らすことが出来なくて。
周囲の音が消えて、聞こえるのはうるさいくらいの心臓の音だけ。
呼吸が苦しくなって、服の上から胸を押さえる。
キラキラとドキドキ。
私を苦しめて、だけどそれ以上に幸せにさせる大好きな笑顔。
いつか、その笑顔が私だけに向けられる日は来るのだろうか。
そう考えて、小さく笑う。
だってそんな日はきっと来ない。
それは少し哀しいけれど、でも。
「カスミ!」
不意にぱちりと目が合って、レッドが顔中で笑って名前を呼んだ。
その笑顔はやっぱり眩しくて、私の心を幸せで満たした。
私だけのものになれば、って願わなくはないけれど。
こうやって君が笑いかけてくれるなら、それで良いと思ってしまうの。