雨上がりと君の笑顔
「オズ、私は外で遊びたいぞ」
「だめだよ。雨降ってるし、風邪引いちゃう」
不機嫌な声を上げるアリスに柔らかい声で、だけどきっぱりと本日何度目かの答えを返す。
するとアリスはむぅと頬を膨らませて、足をぶらぶらと揺らし始めた。
頬の膨らみの大きさに苦笑しながら、手元の本へと目を落とす。
抗議することを諦めたのか、アリスは椅子の上で大人しくしていて、しんとした部屋の中ではページを捲る音が大きく聞こえた。
それが一体どの程度の時間だったのか。
がたんという大きな音に慌てて顔を上げると、視界の端に窓に向かって走り出したアリスの姿を捕らえた。
「アリス、駄目だよ!」
「オズ!見ろ!」
俺の制止の言葉を無視して、アリスは部屋の窓を力一杯に大きく開け放つ。
さっきまでとは打って変わって高揚したその声に、目を瞬かせる。
「早く来い!」
「ちょっ、アリス!」
窓枠を飛び越えて外へと降り立ったアリスに、慌てて椅子から立ち上がり窓際へと走る。
そして、
「!!」
暗雲が去った空に架かる七色の光の橋に、目を見開く。
「オズ、虹だぞ!凄いだろ!」
両手を頭上に広げて得意げに笑うアリスに、気づくと俺も笑っていた。
きらきらと輝く世界と、君の笑顔に目が眩んだ。