冷えた肌に温もりを
自分以外の全員がレコーディングで出かけた、久方ぶりの快適な時間を破ったのは何度も繰り返されるチャイムの音だった。
最初は無視したけど、あまりにも続くものだから根負けして玄関の扉を開けた先に、
「ぐ、グミさん!?どうしたんですか!?」
緑の髪からぽたぽたと滴を落とす、全身びしょ濡れのグミさんがいた。
驚きに声を上げた俺を見て、グミさんは首に手をやりながらあははと笑う。
そしてリンから借りた本を返しに来たのだと言って、ビニール袋を差し出してきた。
「曇ってたから傘いらないなって思ったら、本降りにあってさぁー、わぷっ!」
笑いながら話すグミさんの頭に脱いだシャツを被せて、がしがしと髪を拭く。
どうしたのだの痛いだのグミさんが言ったが、それらを無視して手を動かす。
「まったく、風邪引いたらどうするんですか!」
「引かないよー」
「どこにそんな確信があるんですか!」
「だってヒトじゃないもん」
そう言って俺の手首を掴んだ掌から、いつもよりも冷たい温度が伝わってきて。
腕を引いて抱きしめた体は、やはり予想したとおりに冷え切っていた。
少しでいいから君を温めたくて、君を感じたくて。
身を捩って逃げだそうとするのを、腕に力を込めて阻止した。