てるてるぼうずの恋
それは憂鬱な雨の日の、偶然の出会い。
厚い雲に覆われた暗い世界で、金色の髪を輝かせる君はとても眩しかった。
二つ隣の吊革。
私の横に立った友達と笑いあう君の笑顔に目を奪われた。
君の声に意識を集中させて、手元の参考書の内容は全然頭に入らなかった。
それまでは雨なんて全然好きじゃなかった。
だってバスが混んじゃうし、時間も余計にかかるから。
だけど今は雨が降るのが嬉しくて仕方ない。
だって君に会えるのは雨の日だけ。
迷惑な渋滞ですら、神様に感謝したいくらい。
だってそれだけ長く同じ時間を君と共有できる。
「なあ、その本楽しい?」
「!」
頭の上からかかった声に慌てて顔を上げれば、透き通った青い瞳が間近にあった。
その瞳にかかる金髪に、息を呑む。
「た、楽しくは、無い……けど」
つっかえながら言葉を返すと、彼はふーんと言ってそれからにっと笑った。
「俺はナルト。君、いつも乗ってるってばよね。その髪すっごく綺麗だってばよ!」
真っ直ぐに向けられる笑顔はいつもよりずっと眩しくて、私は自分の桃色の髪に感謝したのだった。
明日からは晴れだということで。
逆さてるてるを大量生産しようと思います。