キャンディトラップ
カーテンを境に自然の闇と人工の光が背中合わせる時間。
人工の光が満ちる部屋の中にいるナルトは、床に置かれた五枚のトランプを見て愕然とした表情をしていた。
そして、自分の前にある柄と数字が全て違うトランプと、自分のものと逆向きに置かれた全てが赤色でそして数字が連続している五枚のトランプを見て、
「また負けたってばよーっ!!!」
本日十回目の台詞を叫んだ。
きっかけは、任務のお礼にと依頼主から貰った山のような飴だった。
それを普通に分けるのはつまらないとナルトが言った結果、大量の飴を賭け金代わりにナルトとサクラはポーカーを繰り返していた。
「これで最後……・」
ナルトは肩を落としながら体の横に転がっていた一つの飴を指に挟み、さっきから笑い声を押し殺そうとしているサクラを見る。
「サクラちゃん……」
恨めしげに名前を呼ばれたサクラはにやけた口元を覆っていた手を離して、口を開く。
「ごめんごめん、でもあんた弱すぎ……あはははっ!」
謝罪の言葉を言ったそばから爆笑するサクラに、ナルトの頬に赤みがさす。
「じゃ、じゃあさ!次勝ったら、飴全部頂戴ってばよ!」
「良いわよ。まあ、あんたが勝てるとは思わないけどね」
ナルトがムキになって出してきた提案に、今の勝負で渡された飴を口に放り込みながらサクラはあっさりと承諾の言葉を返し、最後のゲームをするためにトランプをくり始めた。
────そして、二分後。
「う、嘘……」
「嘘じゃないってばよー」
サクラは先のゲームと同じ自分のカードを見た後、得意げな顔をしたナルトの前に並んだ最強の五枚を見る。
そして、鼻歌でも唄い出しそうな雰囲気のナルトを悔しげに一睨みすると、
「……ほら」
自分の横に山と積んでいた全ての飴をナルトの方に押しやる。
ナルトはそれを嬉しそうに見た後、不機嫌な表情のサクラを見て小さくほくそ笑む。
「あ、サクラちゃん」
「なに……っ!?」
サクラの返事を遮って唇を重ねると、唇を割って深く口づけ、
「全部頂戴って言ったってばよ?」
そう言って自分の舌の上に乗せた小さな飴を見せたナルトは、耳まで真っ赤にしたサクラに向けて意地悪く笑った。