宝払い
「ナミー、めしぃー」
弱々しい声に新聞から目を上げると、机に突っ伏したルフィと目が合った。
「サンジ君が帰ってくるまで待ちなさいよ」
「腹減ったーっ!!!」
私の言葉に耳を傾ける様子も無く足をばたばたと動かすルフィに、沸き上がってきた溜め息を吐き出そうと小さく口を開く。
「そうだ!ナミが作ってくれよ!」
がばっと体を起こしたかと思うと、目をキラキラさせながらそんな事を言ったルフィに口を開けた状態で固まってしまう。
「……なんで私が?」
「飯が食いたいから」
そう断言されて今度こそ深く息を吐き出した。
「なあナミぃー、作ってくれよー。」
それでも何度も食べたいと繰り返すルフィに先に折れたのは私の方だった。
「私の料理は高いわよ」
意地悪く口角を上げてそう言う私にルフィは一瞬きょとんとした後、
「平気だっ!」
そう言って歯を見せて笑った。
そして、私がその理由を問うよりも先に、ルフィは更ににっこりと笑いながら口を開き、
「宝払いするからなっ!」
やけに自信に溢れたその言葉に私は数回瞬きをする。
「食い逃げしたら許さないわよ」
変わらぬ笑顔で料理を催促くるルフィに呆れ混じりにそう吐き出して、ゆっくりと椅子から立ち上がった。