帰り道は君と二人
「ツー君、悪いんだけどお夕飯の買い物に行ってきてくれない?」
そんな頼みごとを笑顔の母さんに言われて反抗を試みたものの、リボーンの蹴りを食らって渋々家を出たのは小一時間前のこと。
夕飯の買い物と言ったくせに渡されたメモにはその他様々な日用品が書かれていて、現在俺の両手には大きな買い物袋が提げられている。
そして、
「ごめんね、京子ちゃん」
「なんで?」
隣には、俺の言葉に不思議そうな表情をする京子ちゃん。
「えーっと、ほら。俺の買い物付き合わせちゃったから」
「ううん。私も買いたい物あったから、気にしないで」
そう言って笑った京子ちゃんに、顔が赤くなる。
あーっ、京子ちゃん可愛すぎるよっ!!
なんて、拳を握って心の中で絶叫していたら、
「ツナ君、携帯鳴ってるよ?」
「え、あっ」
京子ちゃんの声に我に返った。
ズボンのポケットから電子音を発する携帯を慌てて取り出し、画面を開き、
『ケーキあるわよ』
「……」
母さんからの顔文字付きのメールに、頬が引きつった。
なんで、メールを送ってきたと思ったらこんな唐突な内容なんだ。
ていうかケーキなんて……ケーキ……?
改めて読み直して頭の中に引っ掛かった単語に隣を見れば、京子ちゃんはどうしたの?と言って首を傾げた。
一体これが神様か、はたまた黒い家庭教師の仕業なのかは分からないけど。
折角貰ったチャンスなんだから、有り難く使わせてもらうことにしよう。
「ねぁ、京子ちゃん。今から……俺ん家に来ない?」
弾む心を悟られないよう、あくまで自然に聞こえるように言葉を紡いだ。